この記事は約 13 分で読めます
わたしの今の職場はグループ系の認定こども園です。以前に保育士、幼稚園教諭の経験もあります。
認定こども園は保育士にとって良い転職候補ですが、保育園や幼稚園とは違う部分があるのでしっかり理解する必要があります。
ただ保育園との違いと言われても認定こども園は比較的新しい施設ですし、保育士には馴染みがない別の仕事なのでよくわからない人も多いですよね。
- 認定こども園の仕事内容って保育園や幼稚園とは違う?
- 認定こども園の給料っていくら?待遇はいいのかな?
- わたしが認定こども園で働くにはどうすればいいの?
認定こども園で働くことに興味がある人、認定こども園について疑問・質問がある人は、この記事を最後まで読んでください。
今回は認定こども園をよく知らない保育士・幼稚園教諭に向けて、なるべくわかりやすく仕事内容や給料などの待遇、認定こども園で働くメリット・デメリットを解説します。
またわたしの経験を踏まえて、幼稚園教諭より保育士の方が認定こども園に転職するメリットがある理由も解説します。
保育士、幼稚園教諭、保育教諭歴20年以上。幼稚園、保育園、認定こども園など転職して述べ500人以上の園児を保育し、保護者の相談に答えてきました。両親・祖母が教師・保育士なので、保育士は多分天職です。
詳しいプロフィール
認定こども園とはどういう保育施設?
- 認定こども園の役割と立ち位置
- 認定こども園が作られた目的
- 認定こども園は4種類ある
認定こども園の役割と立ち位置
小さな子供を預かる施設は、主に保育園、幼稚園、認定こども園に分かれます。
認定こども園は「幼稚園の教育」と「保育園の保育」両方の機能を持つ、都道府県から認可された保育施設のことです。2006年10月に開始した「認定こども園制度」に基づいて作られるようになりました。
ちなみに認定こども園の管轄は内閣府、保育園の管轄は厚生労働省、幼稚園の管轄は文部科学省です。
認定こども園が作られた目的
文部科学省によると以下の4つの目的で認定こども園が作られたとのことです。
- 保護者の就労形態の多様化に対応するため
- 子供に集団活動や異年齢交流の機会を与えるため
- 利用者が減っている幼稚園を有効活用するため
- 0-2歳児を抱えている家庭を支援するため
現場にいる個人の感想を言うと、対象年齢幅が狭く預かり時間が短い幼稚園より、0歳から預けられて保育時間が柔軟な保育園を望む保護者が増えたことが一番大きいと思います。
ただ認定こども園を別に作っただけでは幼稚園が廃れてしまうので、幼稚園や保育園を認定こども園にする取り組みが行われています。
認定こども園は4種類ある
認定こども園は以下の4つの種類に分類されます。
- 幼保連携型|文科省・厚労省両方の認可を受け、教育機関かつ児童福祉施設の機能を併せ持つ型
- 幼稚園型|教育機関であることは変わらず、既存の認可幼稚園に保育園の機能を追加した型
- 保育園型|児童福祉施設であることは変わらず、既存の認可保育園に幼稚園の機能を追加した型
- 地方裁量型|既存の認可外保育園・幼稚園が認定こども園の条件を満たし都道府県に認められた型
「どうせなら一つにまとめちゃえばいいのに」と思うかもしれませんが、保育園は厚生労働省、幼稚園は文部科学省という管轄があります。まぁ縦割りのお役所的な都合なんだと思います。
なおジョブメドレーによると、それぞれの施設数は幼保連携型5,137園、幼稚園型1,104園、保育園型897園、地方裁量型70園となっています(2019年4月時点)。
ちなみにわたしが勤めている認定こども園は幼保連携型ですが、○○保育園という名前です。
当時は認定こども園にすると補助金が出る制度があったため、保育園・幼稚園は一斉に認定こども園に変わっていました。
保育教諭として認定こども園で働くには
説明した通り、認定こども園は保育園と幼稚園を合わせた保育施設です。そのため保育士が認定こども園で働くには、幼稚園の知識やスキル、幼稚園教諭免許も必要になります。
- 認定こども園で働くために必要な資格
- 保育士に対する幼稚園免許の特例
- 認定こども園・保育教諭の仕事内容
認定こども園で働くために必要な資格
保育園で働くのは保育士、幼稚園で働くのは幼稚園教諭ですが、認定こども園で働くのは保育教諭です。
認定こども園で保育教諭として働くには保育士資格と幼稚園教諭免許の両方が必要です。ただし、担当児の年齢によって以下の通り少し変わります。
- 幼保連携型|保育士資格と幼稚園教諭免許の両方が必要
- 幼稚園型|0-2歳児担当は保育士資格も必要、3歳以上は必要なし
- 保育園型|0-2歳児担当は保育士資格も必要、3歳以上は必要なし
- 地方裁量型|0-2歳児担当は保育士資格も必要、3歳以上は必要なし
保育士に対する幼稚園教諭免許の特例制度
幼稚園教諭免許の特例制度とは、令和6年度末まで保育士に対する幼稚園教諭免許状の要件を緩和して、幼稚園教諭免許の取得に必要な単位数を軽減する措置のことです。
この特例によって大学などに通う時間と学費を大幅に節約できます。特例の条件は以下の通りです。
- 保育士資格を持っていること
- 保育士として3年かつ4320時間以上の実務経験があること
- 実務経験が特例制度の対象施設であること
保育士資格を持っていれば潜在保育士でも構いませんが、令和6年度末(令和元年度末から延長)までに以下の保育施設の合算で3年かつ4320時間以上の実務経験が必要です。
- 保育所、認可外保育施設の一部、小規模保育園、事業所内保育所、公立の認可外保育施設、へき地保育所、幼稚園併設型認可外保育施設、認可外保育施設指導監督基準を満たす認可外保育施設
これらの条件に合致する人は特例対象になり、後は通信制大学などの講義(8単位分)を受けて試験に合格する必要があります(8単位の取得にかかる時間は半年、費用が8万円ほど)。
- 幼稚園教諭免許を短期間で取得できる
- 100万円以上の学費負担が20万円以下に減る
- 保育教諭として働くことができる
一方、幼稚園教諭にとっても保育士資格を取得するには一定のハードルがあります。そのため、保育士資格の特例制度もあります。
保育士資格保有者が幼稚園免許を取得しやすくなる特例、幼稚園免許保有者が保育士資格を取得しやすくなる特例については、それぞれ以下を参考にしてください。
- 幼稚園免許を取得したい保育士|幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例
- 保育士資格を取得したい幼稚園教諭|教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例
認定こども園・保育教諭の仕事内容
認定こども園の仕事内容、保育教諭の仕事内容を理解するには、保育士、幼稚園教諭と比較するとわかりやすいです。
対象年齢 | 仕事内容 | |
---|---|---|
保育士 | 0歳-5歳 | 日常生活のお世話・生活習慣の補助 |
幼稚園教諭 | 3歳-5歳 | 知識・運動・芸術を介した情操教育 |
保育教諭 | 0歳-5歳 | 保育園+幼稚園の機能 |
令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】
保育園は子供が生活をしたり生活習慣を覚える場所で、幼稚園は幼児の発達を助ける学びの場所です。その2つを合わせたのが認定こども園です。そのため、保育教諭の仕事はより幅広くなっています。
とは言え保育園でも学びのプログラムはありますし、幼稚園でも生活習慣の指導は行います。認定こども園の存在によって、この三者の役割・目的はどんどん近付いていますね。
保育教諭の給料や休みなど働き方の違い
- 保育教諭の給料は高い?安い?
- 保育教諭求人の給料・待遇の事例
- 認定こども園の年間休日は平均何日?
保育教諭の給料は高い?安い?
保育教諭の給料は保育士や幼稚園教諭と比べるとわかりやすいです。認定こども園も私立・公立がありますが、私立の保育士・幼稚園教諭が多いと思うので、私立で比較してください。
区分 | 勤続年数 | 平均年収 | |
---|---|---|---|
保育士 | 私立 | 11.2年 | 3,621,876円 |
幼稚園教諭 | 私立 | 7.8年 | 3,449,904円 |
保育教諭 | 私立 | 8.2年 | 3,359,448円 |
保育士 | 公立 | 11年 | 3,637,356円 |
幼稚園教諭 | 公立 | 11年 | 4,540,272円 |
保育教諭 | 公立 | 9.9年 | 3,446,172円 |
平均年収で比較すると保育士が最も高く362万円、保育教諭が最も低く336万円です。ただし平均勤続年数は保育士の方が3年ほど長いので、同年齢でそれほど給料格差があるわけではないと思います。
保育教諭求人の給料・待遇の事例
以下は保育士バンクで探した保育教諭の求人票の一例です。
認定こども園A | 認定こども園B | 認定こども園C |
---|---|---|
東京都 | 北海道 | 兵庫県 |
月給|226,703円-265,622円(大学、大学院、高専卒) 月給213,765円-265,622円(短大、専門卒) |
月給|209,450円~(大学卒) 197,650円~(短大卒) |
月給|215,936円-216,056円(大学卒) 211,936円~212,056円(短大卒) |
基本給| | 基本給|160,000円~(大学卒) 154,000円~(短大卒) |
基本給|195,200円~(大学卒) 191,200円~(短大卒) |
手当|住宅手当:10,000円 固定残業手当:15,703円/10時間 |
手当|固定残業手当:14,400円~17,250円/10時間 | 手当|調整手当 特別手当 労務手当 |
昇給年1回 | 昇給年1回2%-3% | 昇給年1回 |
賞与|年3回 | 賞与|年2回(3ヶ月分) | 賞与|年2回(3-4ヶ月分) |
通勤手当|上限50000円 | 通勤手当|上限20000円 | 通勤手当|上限40000円 |
福利厚生|借り上げ社宅制度80,000円まで 給結婚祝い金80,000円 出産費付加金50,000円 退職金制度 新人研修 フォローアップ研修 乳児研修 幼児研修 健康診断あり 給食あり 社員旅行 |
福利厚生|住宅手当:40000円まで 通勤手当:20000円まで 退職金制度 法人研修会 確定給付年金 給食あり |
福利厚生|勤続奨励金など |
具体的な求人票を見ても分かる通り、保育教諭の給料や待遇は保育士・幼稚園教諭と変わりませんね。
この中では認定こども園Aの月給が一番高く魅力的に見えるかもしれませんが、基本給がわかりませんし、ボーナスが何ヶ月分かもわかりません。ただ東京なので借り上げ社宅があるのは良いですね。
認定こども園Cは基本給が高いので、ボーナスも期待できます。地方でこのような求人を見つけたら転職候補になるでしょう。
認定こども園の年間休日は平均何日?
幼稚園は子供を預ける場所ではなく学ぶ場所なので、長期の夏休み・冬休みがあります。そのため幼稚園教諭は園児の休みに合わせて、夏・冬にある程度の長期休暇を取得できます。
ところが保育教諭は子供の教育に加えて保育があるため、休みは保育士と変わりません。保育園の平均年間休日数は105日前後、幼稚園の平均年間休日数は115日前後です。
そのため幼稚園型(幼稚園→認定こども園)の施設だと、保育教諭は休みが少なくなった気がすると思います。保育士の年間休日や休みのとり方については以下を参考にしてください。
認定こども園で働くメリット・デメリット
認定こども園で働く保育教諭は、ほとんどが保育士や幼稚園教諭から転職して働いています。そのため保育士、幼稚園教諭それぞれ認定こども園で働くメリット・デメリットが違います。
そのうえでわたしは、もともと保育士を経験している方が認定こども園には向いていると考えます。
- 認定こども園で働くメリット
- 認定こども園で働くデメリット
- 保育士の方が認定こども園に向いている理由
認定こども園で働くメリット
保育士は今後必要な幼児教育を学べる
子供の自主性を育て、人格形成に大きな影響を与える幼児教育は今後ますます重視されていくでしょう。これから子育てを控えている人にとっても幼児教育はとても大切です。
モンテッソーリ教育やシュタイナー教育を取り入れている保育園もありますが、まだまだ一般的ではありません。そのため、保育士が認定こども園で幼児教育を学べるのはスキルアップになります。
保育士は保育園にはない行事を体験できる
保育園にも運動会や遠足、発表会などの行事はありますが、認定こども園では幼稚園式の情操教育につながる劇鑑賞や音楽会など保育園では体験できない行事を体験できます。
幼稚園教諭は0歳-2歳の保育が身につく
幼児教育はとても大切ですが、それ以前の生活習慣を身につける成長基盤の形成もとても大切です。
幼稚園教諭が0歳-2歳の保育を行うようになると、幼児教育前の子供の成長過程を知ることができるため、3歳以降の幼児教育にも新たな気付きが生まれるはずです。
幼稚園教諭は保護者との距離感が近くなる
認定こども園は幼稚園と違って0歳から子供を受け入れるため、保護者と同じように授乳やおむつ替えをして、いっしょに子供の成長を見守ることになります。
赤ちゃんのころから子供のお世話を通して成長を保護者と共有できるため、幼稚園教諭にとっては認定こども園の方が保護者との距離感が近くなります。
将来も安定して仕事を続けることができる
保育園や幼稚園が認定こども園に移行する流れは今後も続きます。そのため若い保育士、若い幼稚園教諭は将来を考えて、早めに認定こども園で働くことが仕事の安定につながります。
認定こども園で働くデメリット
保育士・幼稚園教諭どちらも仕事が増える
保育士は幼児教育の概念を学ぶ必要があり、これまでの保育時間でやるべきカリキュラムを考えなければいけません。幼稚園教諭は0-2歳児の保育を学ぶ必要があり、これまで以上に預かり時間が増えます。
どちらも仕事が増えるため、慣れるまでは大変に感じるでしょう。とくに幼稚園教諭は早朝保育や延長保育が増えるので、より大変さを感じるかもしれません。
保育士と幼稚園教諭で保育・教育の価値観が違う
保育士と幼稚園教諭は、似ているようで違う価値観で子供と接しています。そのため、保育に必要なことと幼児教育に必要なことで、元保育士と元幼稚園教諭の意見が対立する場面もあるかもしれません。
保育園組、幼稚園組があると保護者・子供への対応が必要
認定こども園によって、クラスが保育園組と幼稚園組に分かれる場合があります(幼稚園型・幼保連携型に多い)。その場合生活基準が違う家庭の子供が同じ園で過ごすため、いろいろ対応が必要です。
たとえば保育園組と幼稚園組はお迎え時間も違います。このような違いでもそれぞれの子供の心に影響を与えるので、配慮が必要です。
また園内行事に関して幼稚園組の保護者は比較的協力的ですが、保育園組の保護者は仕事が忙しいため協力が難しいことがあります。
そのため保育教諭は、協力が当たり前だと思っている幼稚園組と協力が難しい保育園組の気持ちを汲み取った保護者対応が必要になります。
保育士の方が認定こども園に向いている理由
保育士、幼稚園教諭が認定こども園に転職すると仕事が増えて大変になると言いますが、幼稚園教諭に比べると保育士はそれほど仕事内容が変わらない場合があります。
とくに保育園型の認定こども園の場合、幼稚園組がなかったり、既存の保育園の教育で対応していたりなど(良し悪しはわかりません)保育士の負担はほとんど増えません。
反対に幼稚園型の認定こども園だと明らかに預かり時間が増えるため、保育に慣れていない幼稚園教諭は認定こども園の仕事が大変だと感じるでしょう。
認定こども園の求人はどうやって探せば良い?
この記事で伝えた通り、認定こども園には種類があり、それぞれ特徴が違います。働きやすい認定こども園を選ぶには、転職エージェントに園内部の情報を収集してもらう必要があります。
転職エージェントを利用すれば求人探し、転職先との連絡、条件交渉などの手間や時間を削減できます。
選び方がわからない人は、わたしが使っていたマイナビ保育士と保育士バンクを使ってみてください。公開求人数、拠点数、評価は以下の通りです。
サイト名 | 公開求人 | 拠点数※ | 転職フェア | 担当者 | サポート | 口コミ |
---|---|---|---|---|---|---|
マイナビ保育士 | 20,060件 | 12拠点 | ○ | 4.8 | 4.7 | 4.8 |
保育士バンク | 17,677件 | 8拠点 | ◎ | 4.7 | 4.8 | 4.8 |
拠点数はサービス全体、またはグループ全体のものです。
上記は2022年3月時点のサイト内調査による数値、または予測数です。
マイナビ保育士は求人数が多く、保育園情報を網羅していることが特徴です。マイナビグループなので実績も豊富で、履歴書・面接対策、面接同行などサポートも手厚いですね。
保育士バンクは担当者に元保育士が多く相談しやすいことが特徴です。またWEB面接や転職フェアなどサポートの質が高く、非公開求人も多くて使いやすいです。
-
マイナビ保育士[公式]
全国的に求人が多く、とくに関東の転職に必須!保育園情報を網羅していてサポートも◎
» マイナビ保育士の口コミを見る -
保育士バンク[公式]
担当者は元保育士が多く相談しやすい。転職フェアなどサポートも充実。地方求人も◎
» 保育士バンクの口コミを見る
転職活動には基本的に転職エージェントを使いますが、転職サイトにも登録してください。ジョブメドレー保育士は以下の理由で登録しておくと便利です。
- 転職エージェントより求人数が多いため求人比較に便利
- 担当者からの電話連絡がないのでマイペースで活動できる
- スカウトメール機能で保育園からのスカウトが期待できる
それぞれのサービスの特徴は以下でまとめたので、転職を考えている人は参考にしてください。
先ほども言いましたが、今後は保育園、幼稚園、認定こども園の垣根はなくなっていくと思います。
「わたしは保育士だから」「わたしは幼稚園教諭だから」という考え方は早めに捨てて、認定こども園に照準を合わせた方がキャリア形成に良い影響が出ると思います。