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保育園は私立と公立に分かれます。公立の運営母体は国・自治体です。一方、私立の運営母体は「社会福祉法人」「株式会社(営利法人)」「学校法人」「その他」に分かれます。
この中で間違いなく良いのは国・自治体が運営する公立保育園ですね。公立保育士は地方公務員なので、給料や休暇など待遇はめちゃくちゃ良いです。
では社会福祉法人、学校法人、株式会社の保育園や幼稚園には、どんな特徴・違いがあるんでしょうか。
社会福祉法人、学校法人、株式会社が運営しているからこそ、働く保育士のメリット・デメリットは違いますし、給料面やキャリアアップにも特徴があります。
社会福祉法人、学校法人、株式会社の違いを知っておくことで、保育士として働きたい人、新しい保育園に転職したい人が求人を選ぶ判断材料の1つになります。しっかり押さえておきましょう。
保育士歴20年以上。幼稚園、保育園、こども園など転職して、述べ500人以上の園児を保育し、ママ・パパの相談に答えてきました。両親・祖母が教師・保育士なので、保育士は多分天職です。
詳しいプロフィール
私立保育園の主な運営母体3つの特徴

- 社会福祉法人とは社会福祉事業を行う公益法人
- 株式会社とは営利目的で事業を行う法人
- 学校法人とは私立学校設立・運営を行う公益法人
社会福祉法人とは社会福祉事業を行う公益法人
社会福祉法人とは、社会福祉事業を行う目的で設立された公益法人のことです。管轄は厚生労働省で、保育業界では主に保育園を運営しています。最近は保育園をこども園に変える施設も多いです。
株式会社とは営利目的で事業を行う法人
株式会社とは、営利目的で事業を行う法人のことです。管轄はなく自由な経営ができます。保育施設運営会社として全国展開する法人もあります。2000年以降に参入しているので、小規模保育園が多いですね。
学校法人とは私立学校設立・運営を行う公益法人
学校法人とは、私立学校法の規定で私立学校設立・運営を目的とした公益法人です。管轄は文部科学省で、保育業界では幼稚園を運営する法人が多いです。最近は幼稚園をこども園に変える施設も多いです。

社会福祉法人・株式会社・学校法人の保育施設の違いは

それぞれの法人の割合、特徴、給料などの違いを見てみます。
- 保育園、こども園、小規模保育園の割合
- 法人の設立方法や税金、補助金の違い
- 園長、保育士の給料や在籍年数の違い
保育園、こども園、小規模保育園の割合
社会福祉法人 | 営利法人(株式会社) | 学校法人 | その他 | |
---|---|---|---|---|
保育園 | 86.9% | 4.9% | 2.8% | 5.4% |
認定こども園 | 60.2% | 0.8% | 36.7% | 2.3% |
小規模保育事業所 | 17.9% | 38.2% | 7.5% | 36.4% |
まず保育園の割合が多いのは社会福祉法人で、保育園の9割弱を締めています。助成金や設立支援の関係があったので、以前は保育園を設立・運営するのは、ほぼ社会福祉法人のみでした。
認定こども園も社会福祉法人の割合が一番多く60%ほど、学校法人も36%を締めています。これは、幼稚園からこども園、保育園からこども園に形態を変える施設が増えたためです。
小規模保育園は株式会社がもっとも多く38%以上を締めています。これは「子ども・子育て支援法(2015年度)」により、小規模保育園の設立・運営で国の助成金がもらえるようになったためです。
法人の設立方法や税金、補助金の違い
次に社会福祉法人、株式会社、学校法人の保育園の設立の仕方や所轄庁、運営、税金の違いです。
社会福祉法人 | 株式会社 | 学校法人 | |
---|---|---|---|
事業目的 | 主に社会福祉事業 | 営利目的 | 私立学校の設置 |
所轄庁 | 都道府県、政令指定都市など | なし | 都道府県知事 |
設立に必要な人数 | 理事6名~、監事2名~、理事の2倍超の評議員 | 代表者1人以上 | 理事5名~、監事2名~、理事の2倍超の評議員 |
資金 | 寄付金・補助金 | 株式・債券 | 寄付金・学校債 |
法人税 | 原則非課税 | 所得の30%課税 | 原則非課税 |
道府県民税 | 原則非課税 | 課税 | 原則非課税 |
市町村民税 | 原則非課税 | 課税 | 原則非課税 |
固定資産税 | 社会福祉事業用のみ非課税 | 課税 | 学校事業用のみ非課税 |
事業税 | 原則非課税 | 課税 | 原則非課税 |
施設整備費 | 補助金あり | 補助金なし | 補助金あり |
運営費 | 補助金あり | 補助金あり | 補助金あり |
自治体の補助金加算 | あり | 対象外が多い | あり |
開設時の低利融資 | 医療福祉機構 | なし | 日本私立学校振興・共済事業団 |
見て分かる通り、社会福祉法人と学校法人は法人税、地方税、事業税など各種税金で優遇されていますが、株式会社は運営費の補助金意外は税金優遇がありません。
その分株式会社は保育施設の許可が通りやすく、社会福祉法人と学校法人は設立に手間がかかります。
また、社会福祉法人と学校法人に大きな違いはありません。保育施設ではより大きなメリットがあるのは、社会福祉法人ですが、株式会社と比べると学校法人もかなりメリットが高いです。
園長、保育士の給料や在籍年数の違い
以下は平成25年度の厚生労働省の調査資料です。現在はそれぞれ変化があると思います。
社会福祉法人 | 学校法人 | 株式会社 | その他法人 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
給与月額 | 年数 | 給与月額 | 年数 | 給与月額 | 年数 | 給与月額 | 年数 | |
施設長 | 547,834円 | 25.3年 | 395,806円 | 11.7年 | 346324円 | 10.4年 | 495,984円 | 23.8年 |
保育士|常勤 | 258,901円 | 10.4年 | 217,167円 | 5.4年 | 227,781円 | 4.1年 | 252,990円 | 8.8年 |
その他|常勤 | 295,704円 | 12.4年 | 231,901円 | 6.0年 | 247,246円 | 5.3年 | 285,654円 | 11.5年 |
幼稚園・保育所等の経営実態調査|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/163-1.html)
まず保育士の給料を比べると、もっとも高いのは社会福祉法人です。ただし、学校法人と株式会社が運営する保育施設は新設が多いので、保育士の平均勤続年数は比較的短くなります。
平均勤続年数が短かいとベテラン保育士も少なくなるので、平均給料は安くなります。平均勤続年数が伸びれば平均給料も伸びるので、10年後に給料が高くなる可能性もあります。

社会福祉・株式・学校法人の保育園で働くメリット・デメリット

実際に働く保育士にとって、社会福祉法人、株式会社、学校法人のメリット・デメリットを比較します。
社会福祉法人の保育園のメリット・デメリット
社会福祉法人の保育園のメリット
- 長年の運営経験があるので安定している
- 運営が長いので何人もベテラン保育士がいる
- 保育士の教育や指導経験もしっかりしている
- 親世代も通ったなど地域住民から信頼感がある
- 複数園を運営する法人は待遇や福利厚生も良い
- 園長が顔役で地域に貢献していることが多い
社会福祉法人の保育園のメリットは、安定運営の保育園が多いことです。保育園の歴史が長いと地域のつながりもあり、園長も地域の顔役などで働きやすい環境ができています。
運営が安定していれば、保育士の給料が高めで、待遇も良いことが考えられますね。
社会福祉法人の保育園のデメリット
- 長年運営してるため、老朽化した園舎が多い
- 定期的に指導監査があるため資料作成が大変
- 家族経営だと人間関係が面倒で昇進も難しい
- 手書きは温かみがあるなど効率化の概念がない園もある
- 古い運営体制だと新しい制度をやりたがらない
社会福祉法人の保育園のデメリットは、保育園全体が古いことです。園舎や遊具などが老朽化しているので、定期的に修繕費がかかってしまいます。
また家族経営の保育園では縁故採用や縁故登用をする可能性もあるので、キャリアアップしたい保育士にはデメリットがあります。
体質が古いため効率的な新しい制度・方法を取り入れない傾向もあります。産休・育休、時短勤務、生理休暇、看護休暇などを労働者の義務と認識できていない保育園もあるようです。
株式会社の保育園のメリット・デメリット
株式会社の保育園のメリット
- 保育士を確保のために待遇改善をしている
- 福利厚生や新制度に積極的に取り組んでいる
- 複数園経営の法人はキャリアアップしやすい
- 園運営や保育の効率化でIT化が進んでいる
- 若手の保育士が多く園内の風通しが良い
- 新設保育園は立ち上げから経験できる
- 給与形態や昇給率が明確で休暇も取りやすい
- 新設保育園は園舎や遊具、おもちゃがきれい
株式会社の保育園のメリットは、保育士の待遇改善に取り組む姿勢があることです。給料は社会福祉法人の方が高いですが、家族経営の保育園に比べるとキャリアアップもしやすいですね。
また、ICTを取り入れるなど仕事の効率改善にも意欲的な保育園が多いです。そのため比較的残業にも気をつけていて、休暇制度が充実した保育園が少しずつ増えています。
株式会社の保育園のデメリット
- 小規模保育園中心に運営するのでリスクがある
- 社会福祉法人より優遇が少なく運営努力が必要
- ベテランが少なく保育を教わる機会があまりない
- 保育士不足なので保育のレベルが低い
- 保育方針に独自性を出して手間になっている
- 本部に保育の常識がないと保育士が苦労する
- 新設保育園が多いため地域の信頼感が薄い
- 都市部の保育園が多く働くなら引っ越しが必要
株式会社の保育園のデメリットは、新設保育園が多いため保育士の経験が浅いことや地域の信頼が薄いことです。保育園にとって地域の協力は重要です。
また小規模保育園が多いため、利益が出なければ閉鎖することも考えられます。株式会社の保育園は魅力もありますが、経営者の能力が低いとブラック保育園になりやすい怖さがあります。
小規模保育園は都市部に増えている乳児保育専門の保育園で、経験が浅い保育士、ブランクがある保育士にも人気があります。ちゃんと選び方があるので以下を参考にしてください。
学校法人の保育園のメリット・デメリット
学校法人の保育園のメリット・デメリットは、社会福祉法人とそれほど変わりません。学校法人は、幼稚園をこども園に切り替えるところが多いので、まだ運営面でドタバタしているイメージですね。
実際わたしもこども園で働いてましたが、幼稚園と保育園では保育方針や1日の流れが大きく違うため、幼稚園の先生がいきなりこども園に来ると苦労しそうです。働くなら頭の切り替えが必要だと思います。
社会福祉法人・株式会社・学校法人でどの保育園が良い?

社会福祉法人・株式会社・学校法人という区別は、あくまで判断基準の1つです。
まずは以下のように、社会福祉法人・株式会社・学校法人の保育園のメリットデメリットがざっくりわかればOK。どれを選ぶにしても、規模や運営年数など安定した保育園を選んだ方が失敗は少ないです。
- キャリアアップするなら大手株式会社の保育園
- 安定して働くなら長く続く社会福祉法人の保育園
- 学校法人はこども園で合う・合わないを判断
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