この記事は約 8 分で読めます


保育園は私立と公立に分かれます。公立の運営母体は国・自治体です。私立の運営母体は「社会福祉法人」「株式会社(営利法人)」「学校法人」「その他」に分かれます。
この中で間違いなく良いのは国・自治体が運営する公立保育園ですね。公立保育士は地方公務員なので、給料や休暇など待遇はめちゃくちゃ良いです。
では、社会福祉法人、学校法人、株式会社にどんな特徴・違いがあるのか見てみましょう。
保育士20年選手。幼稚園、保育園、こども園、支援センターなど転職して、触れ合った子たちは数え切れず。たくさんのママ・パパの相談にものってきました。代々教育者家庭ということもあり、保育士は天職なのかな。
詳しいプロフィール
私立保育園の運営母体は主に3つ
- 社会福祉法人とは
- 株式会社とは
- 学校法人とは
社会福祉法人とは
社会福祉法人とは、社会福祉事業を行う目的で設立された公益法人のことです。管轄は厚生労働省で、保育業界では主に保育園を運営しています。最近は保育園をこども園に変える施設も多いです。
株式会社とは
株式会社とは、営利目的で事業を行う法人のことです。管轄はなく自由な経営ができます。保育施設運営会社として全国展開する法人もあります。2000年以降に参入しているので、小規模保育園が多いですね。
学校法人とは
学校法人とは、私立学校法の規定で私立学校設立・運営を目的とした公益法人です。管轄は文部科学省で、保育業界では幼稚園を運営する法人が多いです。最近は幼稚園をこども園に変える施設も多いです。
社会福祉法人・株式会社・学校法人の違いは

それぞれの法人の割合、特徴、給料などの違いを見てみます。
- 保育園、こども園、小規模保育園の割合
- 法人の設立方法や税金、補助金の違い
- 園長、保育士の給料や在籍年数の違い
保育園、こども園、小規模保育園の割合
社会福祉法人 | 営利法人(株式会社) | 学校法人 | その他 | |
---|---|---|---|---|
保育園 | 86.9% | 4.9% | 2.8% | 5.4% |
認定こども園 | 60.2% | 0.8% | 36.7% | 2.3% |
小規模保育事業所 | 17.9% | 38.2% | 7.5% | 36.4% |
2000年以前はほぼ社会福祉法人しか保育園を運営できなかったため、9割弱が社会福祉法人です。2000年以降は小規模保育園が作りやすくなったので、株式会社が増えています。
また幼稚園からこども園、保育園からこども園に形態を変える施設も増えたため、社会福祉法人と学校法人の割合が高くなっています。
法人の設立方法や税金、補助金の違い
社会福祉法人 | 株式会社 | 学校法人 | |
---|---|---|---|
事業目的 | 主に社会福祉事業 | 営利目的 | 私立学校の設置 |
所轄庁 | 都道府県、政令指定都市など | なし | 都道府県知事 |
設立に必要な人数 | 理事6名~、監事2名~、理事の2倍超の評議員 | 代表者1人以上 | 理事5名~、監事2名~、理事の2倍超の評議員 |
資金 | 寄付金・補助金 | 株式・債券 | 寄付金・学校債 |
法人税 | 原則非課税 | 所得の30%課税 | 原則非課税 |
道府県民税 | 原則非課税 | 課税 | 原則非課税 |
市町村民税 | 原則非課税 | 課税 | 原則非課税 |
固定資産税 | 社会福祉事業用のみ非課税 | 課税 | 学校事業用のみ非課税 |
事業税 | 原則非課税 | 課税 | 原則非課税 |
施設整備費 | 補助金あり | 補助金なし | 補助金あり |
運営費 | 補助金あり | 補助金あり | 補助金あり |
自治体の補助金加算 | あり | 対象外が多い | あり |
開設時の低利融資 | 医療福祉機構 | なし | 日本私立学校振興・共済事業団 |
次に運営母体ごとの保育園の設立の仕方や所轄庁、運営、税金の違いです。社会福祉法人と学校法人は税制で優遇されていますが、株式会社は運営の補助金意外は優遇されてません。
また、社会福祉法人と学校法人に大きな違いはありません。保育施設ではより大きなメリットがあるのは、社会福祉法人ですが、株式会社と比べると学校法人もメリットが高いです。
園長、保育士の給料や在籍年数の違い
以下は平成25年度の厚生労働省の調査資料です。現在はそれぞれ変化があると思います。
社会福祉法人 | 学校法人 | 営利法人 | その他法人 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
給与月額 | 年数 | 給与月額 | 年数 | 給与月額 | 年数 | 給与月額 | 年数 | |
施設長 | 547,834円 | 25.3年 | 395,806円 | 11.7年 | 346324円 | 10.4年 | 495,984円 | 23.8年 |
保育士|常勤 | 258,901円 | 10.4年 | 217,167円 | 5.4年 | 227,781円 | 4.1年 | 252,990円 | 8.8年 |
その他|常勤 | 295,704円 | 12.4年 | 231,901円 | 6.0年 | 247,246円 | 5.3年 | 285,654円 | 11.5年 |
保育士|非常勤 | 154,394円 | 7.2年 | 142,398円 | 5.7年 | 132,221円 | 4.3年 | 149,494円 | 6.4年 |
その他|非常勤 | 146,962円 | 6.1年 | 147,544円 | 2.6年 | 141,550円 | 3.3年 | 150,561円 | 5.1年 |
幼稚園・保育所等の経営実態調査|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/163-1.html)
常勤保育士を見ると、給料がもっとも高いのは社会福祉法人です。
ただし、学校法人と営利法人は、平均勤続年数が社会福祉法人の半分ほどです。学校法人はこども園、営利法人は小規模保育園が多いためだと思います。
どちらも新しくできた施設形態なので、平均勤続年数は少なくなります。平均勤続年数が伸びれば平均給料も伸びるので、10年後にどちらが高くなるかはわかりません。

社会福祉・株式・学校法人のメリット・デメリット

実際に働く保育士にとって、社会福祉法人、株式会社、学校法人のメリット・デメリットを比較します。
社会福祉法人の保育園のメリット・デメリット
社会福祉法人の保育園のメリット
- 長年の運営経験があるので安定している
- 運営が長いので何人もベテラン保育士がいる
- 保育士の教育や指導経験もしっかりしている
- 親世代も通ったなど地域住民から信頼感がある
- 複数園を運営する法人は待遇や福利厚生も良い
- 園長が顔役で地域に貢献していることが多い
社会福祉法人の保育園のメリットは、安定運営の保育園が多いことです。保育園の歴史が長いと地域のつながりもあり、園長も地域の顔役などで働きやすい環境ができています。
今だと、2世代、3世代で同じ保育園に通ってる場合も少なくないですよね。
社会福祉法人の保育園のデメリット
- 長年運営してるため、老朽化した園舎が多い
- 定期的に指導監査があるため資料作成が大変
- 家族経営だと人間関係が面倒で昇進も難しい
- 手書きは温かみがあるなど効率化の概念がない
- 古い運営体制だと新しい制度をやりたがらない
社会福祉法人の保育園のデメリットは、全体的に古いことです。園舎や遊具が老朽化してて、定期的に修繕費がかかります。また家族経営の保育園は、キャリアアップしたい保育士にはデメリットがあります。
体質が古いため効率的な新しい制度・方法を使わない傾向もあります。産休・育休、時短勤務、生理休暇、看護休暇などを労働者の義務と認識できていない保育園もあるそう。
株式会社の保育園のメリット・デメリット
株式会社の保育園のメリット
- 保育士を確保のために待遇改善をしている
- 福利厚生や新制度に積極的に取り組んでいる
- 複数園経営の法人はキャリアアップしやすい
- 園運営や保育の効率化でIT化が進んでいる
- 若手の保育士が多く園内の風通しが良い
- 新設保育園は立ち上げから経験できる
- 給与形態や昇給率が明確で休暇も取りやすい
- 新設保育園は園舎や遊具、おもちゃがきれい
株式会社の保育園のメリットは、保育士の待遇改善に取り組む姿勢があることです。給料は社会福祉法人の方が高いですが、家族経営の保育園に比べるとキャリアアップもしやすいですね。
また、ICTを取り入れるなど仕事の効率改善にも意欲的な保育園が多いです。そのため比較的残業にも気をつけていて、休暇制度が充実した保育園が少しずつ増えています。
株式会社の保育園のデメリット
- 小規模保育園中心に運営するのでリスクがある
- 社会福祉法人より優遇が少なく運営努力が必要
- ベテランが少なく保育を教わる機会があまりない
- 保育士不足なので保育のレベルが低い
- 保育方針に独自性を出して手間になっている
- 本部に保育の常識がないと保育士が苦労する
- 新設保育園が多いため地域の信頼感が薄い
- 都市部の保育園が多く働くなら引っ越しが必要
株式会社の保育園のデメリットは、都市部の新設保育園が多いため経験が浅いことや地域の信頼が薄いことです。保育園にとって地域の協力は重要です。
また小規模保育園が多いため、利益が出なければ閉鎖することも考えられます。株式会社の保育園は魅力もありますが、経営者の能力が低いとブラック保育園になりやすい怖さがあります。
小規模保育園は都市部に増えている乳児保育専門の保育園で、経験が浅い保育士、ブランクがある保育士にも人気があります。ちゃんと選び方があるので以下を参考にしてください。
学校法人の保育園のメリット・デメリット
学校法人の保育園のメリット・デメリットは、社会福祉法人とそれほど変わりません。学校法人は、幼稚園をこども園に切り替えるところが多いので、まだ運営面でドタバタしているイメージですね。
実際わたしもこども園で働いてましたが、幼稚園と保育園では保育方針や1日の流れが大きく違うため、幼稚園の先生がいきなりこども園に来ると苦労しそうです。働くなら頭の切り替えが必要だと思います。
社会福祉・株式・学校法人のどれを選べば良い?

社会福祉法人・株式会社・学校法人という区別は、あくまで判断基準の1つです。
まずは以下のように、社会福祉法人・株式会社・学校法人のメリットデメリットがざっくりわかればOK。どれを選ぶにしても、規模や運営年数など安定した保育園を選んだ方が失敗は少ないです。
- キャリアアップするなら大手株式会社の保育園
- 安定して働くなら長く続く社会福祉法人の保育園
- 学校法人はこども園で合う・合わないを判断
ただ保育園の雰囲気は求人票を見てもわからないので、保育士転職サイトに情報を集めてもらいましょう。情報をたくさん集めるためにも、保育士転職サイトは複数使ってください。
わたしのおすすめは、元保育士の担当者が多い保育士バンク、関東に強いマイナビ保育士、電話連絡の必要がないジョブメドレーです。
- 保育士バンク
保育士が選ぶ転職サイトNo.1!担当者は元保育士が多く相談しやすい。地方求人も◎
» 保育士バンクの口コミはこちら - マイナビ保育士
関東の転職には必須!関東の保育園情報を網羅していて、サポートも厚い。実績も◎
» マイナビ保育士の口コミはこちら - ジョブメドレー保育士
電話連絡が嫌いな人は登録必須!公開求人数が1番多く、LINEでサポートも依頼可能。
» ジョブメドレー保育士の口コミはこちら
おすすめの理由は以下でまとめているので、参考にしてください。
初めて転職活動をする人、保育士転職サイトの登録が初めてで不安な人は以下を参考にしてください。保育士転職サイトの登録から内定をもらうまでの使い方を徹底解説しています。