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本ページにはプロモーションが含まれます。乳児院とは家庭の事情で家族と一緒に暮らせない赤ちゃんなどを預かる施設のことです。乳児院ではさまざまな人が働いていますが、その中で保育士は中心的な役割を果たします。
ただし保育園と同じような保育をするわけではありません。乳児院は生活の場なので、保育園より子供の生活に密着したお世話と家庭に似た生活環境を作る必要があります。
乳児院で働いてみたい保育士は割と多いですが、やっぱり今の保育園から転職するとなると、
- 乳児院で働きたいんだけど、必要な資格や準備ってある?
- 保育士が乳児院に転職したら給料ってどうなるのかな?
- 乳児院で働くのって大変?どういう仕事内容なの?
などが気になりますよね。そこで今回は乳児院で働く保育士と保育園で働く保育士の違い、乳児院の仕事内容や1日のスケジュール、給料や待遇などについてわかりやすく解説します。
なお、乳児よりも幼児~子供のお世話をする児童養護施設で働きたいという人もいると思います。児童養護施設で働く方法を知りたい人は以下を参考にしてください。
保育士、幼稚園教諭、保育教諭歴20年以上。幼稚園、保育園、認定こども園など転職して述べ500人以上の園児を保育し、保護者の相談に答えてきました。両親・祖母が教師・保育士なので、保育士は多分天職です。
詳しいプロフィール
乳児院とは児童養護施設の一種
乳児院とは、貧困や保護者の病気、虐待などの原因で生活が困難な家庭に代わって乳児を長期で預かる養育施設のことです。または、一時預かり施設として一般的に利用されることもあります。
乳児院では保育士や児童指導員、看護師資格を持つ職員が中心で働き、医師、栄養士など多くの職員と連携して運営されています。
入所の対象年齢は新生児~2歳未満までですが、6歳ごろまで在所できる施設もあります。乳児院の概要や長期・短期入所の基準など利用者側に必要な基礎知識は以下でまとめています。
- 乳児院で働く人の職業・職種
- 乳児院の配置基準
- 乳児院保育士と通常の保育士の違い
乳児院で働く人の職業・職種
乳児院保育士
乳児院で子供のお世話をするのは保育士の役割です。ただし保育園と違い乳児院は生活の場です。そのため保育士は児童指導員とともに、家庭環境を意識して保護者に近い立ち位置で子供の支援を行います。
児童指導員
児童指導員は保育士といっしょに子供の養育、自立支援を補助する役割を担います。
家庭支援専門相談員
家庭支援専門相談員は児童相談所と連携して保護者を支援し、子供の家庭復帰を目指す役割を担います。
医師&看護師
医師と看護師は、通常の病院勤務と同様にシフトを組んで業務に当たります。乳児院では子供の病気の予防や治療など健康面のサポートだけでなく、子供の心のケアも行います。
栄養士&調理員
栄養士は、子供一人ひとりの健康状態を加味して食事の献立を考え、調理員とともに日々の食事を提供する役割を担います。
心理療法担当職員
心理療法担当職員は、虐待など心理的な影響を受けた子供にカウンセリングなどを行って安心感を与えるだけでなく、人間関係の修正・形成支援を行う役割を担います。
里親支援専門相談員
里親支援専門相談員は、児童相談所や里親会と連携しながら里親の開拓や子供の里親委託を推進する役割を担います。
乳児院の配置基準
乳児院では、「児童福祉法に基づき児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例施行規則」に基づいて職員の配置基準が決まっています。
乳児院に在所する乳幼児が10人以上の場合は、職員(看護師・保育士・児童指導員)の配置基準として以下の取り決めがあります。
第6条 条例第28条第7項に規定する数のうち看護師の数は,次に掲げる数をいずれも満たす数(次に掲げる数をいずれも満たす数の合計数が7未満である場合にあっては,7以上)とする。
(1) 乳児及び満2歳に満たない幼児おおむね1.6人につき1以上
(2) 満2歳以上満3歳に満たない幼児おおむね2人につき1以上
(3) 満3歳以上の幼児おおむね4人につき1以上
児童福祉法に基づき児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例施行規則
また乳児院に在所する乳幼児が10人未満の場合の配置基準は、看護師・保育士・児童指導員の合計数が7人以上となり、そのうち1人は必ず看護師を配置しなければいけません。
乳児院保育士と通常の保育士の違い
一般的な保育園の保育士の仕事内容と乳児院保育士の仕事内容には、3つの大きな違いがあります。
乳児院保育士は子供の親代わりとしてともに生活をする
保育士は基本的に昼間の時間で子供の保育を行いますが、乳児院保育士は普段は会えない親代わりになって子供と生活をともにします。
乳児院は24時間365日運営しているので夜勤がある
乳児院は子供が生活をする場所なので24時間365日運営します。そのため、乳児院保育士だけでなく看護師や児童指導員は夜勤や宿直をする必要があります。
看護師、児童指導員、栄養士などと連携して仕事をする
乳児院は子供にとっての生活空間なので、保育園よりも看護師、栄養士などとより密に連携して子供の成長を見守っていきます。
乳児院保育士の仕事内容や待遇
- 乳児院保育士に必要な資格
- 乳児院保育士の働き方・仕事内容
- 乳児院保育士の雇用形態
- 乳児院の1日のスケジュール
- 乳児院保育士の給料など待遇
乳児院保育士に必要な資格
保育士資格があれば、乳児院には有利に転職できます。パートやアルバイトの場合はとくに資格は必要なく乳児院で働くことができます。
ちなみに児童指導員は児童福祉司の任用資格、家庭支援専門相談員は社会福祉士、精神保健福祉士、5年以上の施設従事経験、または児童福祉司の任用資格などが必要になります。
乳児院保育士の働き方・仕事内容
乳児院保育士の仕事内容は昼間は保育士とほぼ同じで、夜から朝にかけては家庭での母親の役割を担います。
勤務体制・シフトは乳児院によって違います。基本的には夜勤含む3-5交代のシフトで、夜勤は1.5-2時間ほどの仮眠時間があります。また宿直勤務がある乳児院もあります。
正職員の乳児院保育士とパート・アルバイトの仕事内容自体に違いはありませんが、パートは日勤の補助がメインで夜勤をしないことが多いようです。
以下は乳児院保育士のシフトの一例です。これに準夜勤が加わる乳児院もありますし、時間がまったく異なるシフトもあるのであくまでも参考です。
- 早番|6時-15時
- 中番|8時-17時
- 遅番|10時-19時
- 夜勤|19時-7時
乳児院では夜勤をした次の日は休みが多いですが、遅番勤務になる人もいます。休みの取り方も乳児院によるので、事前に調べておきましょう。
乳児院保育士の1日のスケジュール
乳児院保育士の1日のスケジュールは、乳児院によって多少違います。以下はスケジュールの一例です。
- 6:00|起床
子供の検温や着替えを行う、夜勤の保育士から引き継ぎをする - 8:00|朝食
授乳や離乳食の介助をする - 9:00|遊び
歌や絵本の読み聞かせ、おもちゃ遊び、外遊びなどをする - 11:30|昼食
授乳や離乳食の介助をする - 12:00|午睡
子供の着替えと寝かしつけをする、書類作成や事務作業を行う - 14:30|おやつ
子供を午睡から起こして、おやつの介助をする - 15:00|遊び
歌や絵本の読み聞かせ、おもちゃ遊び、外遊びなどをする - 17:30|夕食
授乳や離乳食の介助をする - 18:00|入浴
子供の入浴の介助、沐浴を行う - 20:00|就寝
寝かしつけをする、夜勤の保育士に引き継ぎをする
こうして1日のスケジュールを見ると、日中は保育園の0-2歳児クラスや小規模保育園と同じようなイメージで保育を行うことがわかりますね。
夕方以降から朝食以後までは家庭生活を意識して1日のルーティーンを身に着けさせたり、愛着形成を行うなど育児と同じイメージで子供と過ごします。
乳児院保育士の給料など待遇
乳児院保育士の平均的な給料は月額20-30万円前後で、一般的な保育士より良い場合が多いですね。というのも、夜勤手当や宿直手当がつくからです。以下は保育士バンクとマイナビ保育士の求人例です。
乳児院A | 乳児院B | 乳児院C |
---|---|---|
愛知県 | 兵庫県 | 東京都 |
月給|19万円-37万円(諸手当込) | 月給|203,352円~245,464円 | 月給|2200,000円~(業務手当込) |
基本給|短大卒19万円、四大卒20万円 | 基本給|177,100円~214,700円 | |
手当| | 手当|夜勤手当:2200円/回 宿直手当:3300円/回 皆勤手当:1500円/月 |
手当|給与改善手当:7500円/月 夜間業務手当:5000円/月 夜勤加算手当:4000円/月 夜勤手当:2000円-4500円/回 |
昇給年1回 | 昇給年1回 | 昇給年1回 |
賞与|年2回(3.1ヶ月分) | 賞与|年2回(4.3ヶ月分) | 賞与|年2回(4.5ヶ月分) |
通勤手当|上限50000円 | 通勤手当|上限20000円 | 通勤手当|上限40000円 |
福利厚生|雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険 退職金あり(勤続1年以上) |
福利厚生|雇用保険、健康保険、厚生年金、労災保険 | 福利厚生|退職金制度 研修制度 健康診断あり インフルエンザ予防接種 |
乳児院Aは月給が19-37万円と幅広いですが、「諸手当込」なので夜勤手当なども含んでいると思います。乳児院Bと乳児院Cは手当がわかるので、夜勤や宿直の回数で月給がいくらになるかわかりますね。
乳児院Bと乳児院Cはボーナスが4ヶ月以上なので、80万円前後は期待できます。パッと見では東京の乳児院Cの待遇が良い気がします。転職地域が決まっている人は、同地域の求人を比べてください。
乳児院のパートやアルバイトの時給は1000円-1500円ほどが多いですね。乳児院保育士として働きたいけど夜勤をしたくない人は、確認のうえパートなどで求人応募すると良いでしょう。
乳児院保育士は辛い・辞めたいという声もある
育児経験者や母性が強い人など、多くの子供と接する乳児院保育士を天職にしたい人もいるでしょう。
ただ乳児院保育士もすべてが理想通りではありません。乳児院保育士の仕事が辛い・乳児院を辞めたいと考える人もいます。
乳児院で保育士として働いてます😅
先輩からめちゃめちゃ嫌味言われて辞めたい— みいころ (@Rs9Acy) May 30, 2019
では乳児院保育士が辞めたいと思う理由はなんでしょうか。
- 夜勤シフトなどで体力的に辛い
- 子供の成長に対する責任が重い
- 仕事に対する給料が見合ってない
夜勤シフトなどで体力的に辛い
乳児院は24時間365日運営している施設です。そのため、乳児院保育士はほぼ夜勤シフトがあります。夜勤シフトがあると、生活のリズムに慣れるまでは体力的に辛いと感じます。
さらに忙しい時期や人手不足のときは急にシフトを組まれることもあるので、体力的な理由で辞めてしまう人は多いでしょう
またカレンダー通りに休みが取れないことが嫌な人もいますね。土日、年末年始、お盆などにもシフトが入っているので、家族がいると予定が合わせづらいという悩みがあります。
子供の成長に対する責任が重い
乳児院に在所する子供の多くは「母の精神疾患」「両親の未婚」「養育拒否」など家庭問題を抱えています。乳児院保育士は、そんな子供と保護者の親子関係を築くサポートも行います。
ただすべての家庭がうまくいくわけではなく、子供が両親に引き取られずに里親や児童養護施設に引き渡すケースも少なくありません。
もちろん乳児院保育士のせいではないんですが、子供に対する責任を感じて乳児院保育士の仕事が辛い・辞めたいと思う人も多いです。乳児院の入所理由の割合などは以下を参考にしてください。
仕事に対する給料が見合ってない
乳児院保育士の給料は保育士よりも高い場合も多いですが、夜勤手当や宿直手当が含まれているぶん月給が高くなっている可能性があります。
また休暇制度や手当などが充実していて待遇が良い求人も多いですが、最近は保育士求人でも福利厚生が充実した求人は見つかります。
乳児院保育士は、通常の保育士の仕事に加えて子供の生活すべてを見るため仕事内容はハードです。子供とともに生活するので、健康管理は保育園よりもシビアです。
乳児院で集団感染はほんとに地獄絵図だよ...辛い。
— うまな (@Umx9_) April 22, 2020
そのため、仕事に対する給料が見合っていないから辞めたいと考えるのも納得はできます。
乳児院保育士の求人はどこで探せば良い?
保育園に勤めている保育士は乳児院が特別な施設に感じるかもしれませんが、保育士から乳児院保育士に転職することは珍しいことではありません。
Twitterで保育士と検索すると辞めたいというツイートがたくさんでてくる💡
わたしは以前障害児施設で働いていて、子どもたちはとっても可愛いんだけど職場環境が劣悪だった。
今は乳児院で働いていて、ずっと働いていけると思える環境が整っていて、保育士の仕事がとても楽しい!— あちゃ (@pinp0npanp0n) May 11, 2017
なんとなく求人見てたら学生だったころに働きたかった施設(乳児院)の求人を発見。就活の時ここの求人がなくて今の児童養護施設を応募。結果採用されて働いてますが、現在ここを辞めたい!って思うほどのポイントは見つからなくて。けど求人を見たらやっぱり乳児院で働きたいて思いました。
— のはら (@wzsk11_b2stys) June 29, 2017
乳児院保育士に挑戦したい人は転職エージェントから求人紹介を受けてください。
転職エージェントを利用すれば自分で求人を探す必要はありませんし、転職先との連絡や条件交渉など転職活動にかかる手間や時間を削減できます。
保育士に挑戦したい人は
乳児院保育士は複雑な家庭環境にある子供と愛着関係を築き、子供の未来を作る大切な仕事です。社会貢献の側面でも、やりがいを持てる人は多いと思います。
もちろん子供の成長に寄り添うため責任感が必要ですし、夜勤や宿直などハードな面はありますが、個人的には素晴らしい仕事の1つだと思います。興味がある人はぜひ挑戦してみてください。