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「保育士等キャリアアップ研修」制度は知ってますよね。ただ名前は知っていても、「内容は知らない」「わたしには関係ない」という人は多いです。
これまで保育園の役職は園長、主任保育士だけでしたが、正式に副主任保育士、専門リーダー、職務分野別リーダーが追加されました。これら役職になるために受けるのが、保育士キャリアアップ研修です。
一定条件をクリアして、保育士キャリアアップ研修を受けると給料面、キャリア面でメリットがあります。保育士キャリアアップ研修は必ず役に立つので、メリットと研修内容を知っておきましょう。
この記事を読めば、難しい保育士キャリアアップ研修の仕組みが理解できて、必ずあなたの将来に活かせる資産になります。
保育士歴20年以上。幼稚園、保育園、こども園など転職して、述べ500人以上の園児を保育し、ママ・パパの相談に答えてきました。両親・祖母が教師・保育士なので、保育士は多分天職です。
詳しいプロフィール
保育士キャリアアップ研修の大きなメリット

- 保育士の給料に充てる交付金が支給される
- 保育の専門知識を高めて現場に活かせる
- 転職のときに保育園にアピールできる
保育士の給料に充てる交付金が支給される
保育士キャリアアップ研修の大きな目的の1つが、保育士の給料を上げることです。
保育士キャリアアップ研修を受けると、「副主任保育士」と「専門リーダー」には4万円、「職務分野別リーダー」には5千円の交付金(助成金)が、毎月保育園に支払われます。
保育園は、支給された交付金を「処遇改善手当」として、保育士の給料に充てます。ただし満額もらえるわけじゃなく、配分の計算方法があります。ルールは以下の通りでややこしい……。
- 月額4万円又は月額5千円の加算対象人数分(園長・主任保育士等を除いた職員の概ね1/3又は1/5)を支給
- 副主任保育士等への配分は、実際に月額4万円の賃金改善を行う職員を加算対象人数の1/2(端数切り捨て)以上確保した上で、副主任保育士等、職務分野別リーダー等に配分(月額5千円~4万円未満)
- 職務分野別リーダー等への配分は、加算対象人数以上確保する(月額5千円~副主任保育士等の最低額)
- 法人内の他の施設の職員の賃金改善に充当可(2022年度までの時限措置。加算額の20%の範囲内。)
簡単に言うと、職務分野別リーダーには5千円支給されます。一方、副主任保育士や専門リーダーは、役職に就いた人数の半数(小数点切り捨て)に4万円支給で、残りは他の保育士に分配できます。
つまり、支給された交付金をどう分配するかは保育園の采配によるということです。
保育の専門知識を高めて現場に活かせる
保育士キャリアアップ研修では、「専門分野別研修」「マネジメント研修」「保育実践研修」の研修を受けます。研修の概要は国で一定の基準を定めたガイドライン(通知)を作成しています。
保育士キャリアアップ研修を受けることで、幼児保育や食育、保護者支援などの専門知識を体系的に身に付けて、日々の保育に活かすことができます。
転職のときに保育園にアピールできる
保育士キャリアアップ研修は国の制度なので、履修済みなら資格記載(履歴書に「保育士等キャリアアップ研修修了」と記載)できます。そのため、転職時に役職採用して欲しい!とアピールできます。
また、将来の転職を見据えて乳児保育や障害児保育の研修を受講すれば、保育園だけじゃなく乳児院や児童発達支援施設などにも転職しやすくなります。

保育士キャリアアップ研修の概要

研修は全部で8つ。そのうち6つが専門分野別研修、残りがマネジメント研修と保育実践研修です。
職務分野別リーダーになるには専門分野別研修のうち1分野の研修、副主任保育士はマネジメント研修+3分野の研修、専門リーダーは4分野の研修を受けなければいけません。
保育士キャリアアップ研修に必要な時間は、職務分野別リーダーが15時間、副主任保育士と専門リーダーが60時間です。
- 専門分野別研修の内容
- マネジメント研修の内容
- 保育実践研修の内容
専門分野別研修の内容
専門分野別研修は、以下の6つが専門分野別の研修に分かれています。
- 乳児保育(主に0歳から3歳未満児向けの保育内容)
- 幼児教育(主に3歳以上児向けの保育内容)
- 障害児保育
- 食育・アレルギー対応
- 保健衛生・安全対策
- 保護者支援・子育て支援
マネジメント研修の内容
マネジメント研修は、保育現場でリーダー経験があり、主任保育士の補佐役を担う人が受ける研修です。
主に人材育成や組織の目標設定、保育士が働きやすい環境づくりなど、リーダーとしてマネジメント能力を身につけるために行います。
保育実践研修の内容
保育実践研修は、潜在保育士など保育現場で実習経験が少ない人が受ける研修です。
主に子供との関わり方、遊び方、保育の環境作りなどを身に付けるために行います。ブランクがある保育士が復職したい場合は、うまく活用してください。


保育士キャリアアップ研修に必要な条件
- 職務分野別リーダーに必要な条件
- 専門リーダーに必要な条件
- 副主任保育士に必要な条件
- 4つ以上の分野の研修を修了していること
職務分野別リーダーに必要な条件
1つの保育園で園長・主任を除いた保育士のうち、5分の1の保育士が研修を受けられます。職務分野別リーダーになるためには、以下の条件が必要です。
- 認可保育園での保育経験年数が3年以上
- 担当する職務分野の研修を修了していること
- 保育園から修了した研修分野の職務分野別リーダーに発令が必要
専門リーダーに必要な条件
1つの保育園で園長・主任を除いた保育士のうち、3分の1の保育士が研修を受けられます。専門リーダーになるためには、以下の条件が必要です。
- 認可保育園での保育経験年数が7年以上
- 職務分野別リーダーを経験していること
- 4つ以上の分野の研修を修了していること
副主任保育士に必要な条件
1つの保育園で園長・主任を除いた保育士のうち、3分の1の保育士が研修を受けられます。副主任保育士になるためには、以下の条件が必要です。
- 認可保育園での保育経験年数が7年以上
- 職務分野別リーダーを経験していること
- マネジメント+3つ以上の分野の研修を修了していること
保育士キャリアアップ研修を受けられる自治体
保育士キャリアアップ研修は、潜在保育士も受けられます。ただし保育園の申し込みのみの自治体もあり、その場合は潜在保育士は受講できません。詳しくは自治体ページを見てください。


保育士キャリアアップ研修の心配な点
- 保育士キャリアアップ研修を受けても役職に就けない
- 処遇改善手当がいつまで続くかわからない
- 処遇改善手当を満額もらえない保育士も多い
保育士キャリアアップ研修を受けても役職に就けない
保育士キャリアアップ研修を受けても、役職に就けない保育士も多いです。1つの保育園で主任保育士は何人もいらないので、40-50代の保育士が多いと何年もキャリアアップできないこともあります。
処遇改善手当がいつまで続くかわからない
保育士キャリアアップ研修の交付金は、いつまで続くかわかりません。そのため、「処遇改善手当がいつまで続くかわからないのに、保育士キャリアアップ研修なんて受けたくない」と言う人もいます。
ただ昨今の保育士不足はなかなか解消しないので、保育士不足が続く限り廃止されないでしょう。ただ、多くの税金が使われているのは事実です。
処遇改善手当を満額もらえない保育士も多い
全体の10%の保育施設で、合計7億円ほどが処遇改善手当に当てられていない(園の運営費などに充てられている)ことがわかっています。
意味ないじゃん😟
そもそも交付金の名目が明確なんだから、全額保育士にあげないと国の税金が無駄になってるでしょ……。https://t.co/nSJJyvZEB8— まーさ@保育士ママ🧸20年選手 (@mama_ism) December 30, 2019
理由は「失念していた」だそう……。忘れていても、ごまかしていても経営者失格ですよね。ただ交付金を受け取るのは保育施設なので、どれくらい給料に反映されるかはわかりません。

いいえ、勘違いしないでください。処遇改善手当を払っていない保育園も勘違いしてます。
交付金を受け取るのは保育園ですが、その権利は保育士に付随しています。そのためあなたが転職すれば、転職先の保育園が交付金を受け取ることになります。
今の保育園でメリットがないなら、役職に就ける保育園に行けば良いだけです。人が足りない新設保育園はたくさんあるので、保育士に報酬を払わない保育園にいる必要はないですね。


保育士キャリアアップ研修で有利に転職できる
というわけで保育士がキャリアアップ研修を受ければ、転職に有利なことは間違いないです。今後は主任候補求人に加えて、副主任保育士、専門リーダー、職務分野別リーダーの求人も増えるでしょう。
向上心があっても、キャリアアップが難しい保育園だとモチベーションが続かなくなります。保育士キャリアアップ研修は、保育士の将来の選択肢を増やす大切な制度なので積極的に挑戦してください。

保育士バンク、マイナビ保育士、ジョブメドレー保育士で、主任保育士、副主任保育士、専門リーダー、職務分野別リーダーの求人数を調べてみました(2020年2月時点)。
保育士バンク | マイナビ保育士 | ジョブメドレー | |
---|---|---|---|
主任保育士 | 184件 | 367件 | 525件 |
副主任保育士 | 24件 | 52件 | 68件 |
専門リーダー | 16件 | 4件 | 462件 |
職務分野別リーダー | 16件 | 1件 | 8件 |
まだ新しい役職の求人は少ないですが、ピンポイントで各役職を求めている保育士求人もあります。
こういった保育園はキャリアアップ研修に力を入れているだけじゃなく、組織もしっかり作られていることが多いです。
保育士転職サイトは、紹介した保育士バンク、マイナビ保育士、ジョブメドレー保育士がおすすめです。
保育士バンクは担当者に元保育士が多いので気軽に相談できますし、非公開求人も多くて使いやすいです。マイナビ保育士は関東に強く、実績が豊富です。ジョブメドレー保育士は電話連絡の必要がなく、地方求人も多いです。
- 保育士バンク
保育士が選ぶ転職サイトNo.1!担当者は元保育士が多く相談しやすい。地方求人も◎
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関東の転職には必須!関東の保育園情報を網羅していて、サポートも厚い。実績も◎
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実際にこれらの保育士転職サイトに登録して、主任保育士、副主任保育士、専門リーダー、職務分野別リーダーの求人を検索してみてください。
処遇改善手当がいくらかも大切なので、求人を探すときは必ず求人票を確認してください。わたしが見た限り、副主任・専門リーダーの処遇改善手当が1-4万円、職務分野別リーダーが0.5-1.5万円でした。