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本ページにはプロモーションが含まれます。わたしは長く保育業界にいるので、園児の様子を見て「え、もしかして虐待を受けてる……?」と感じたことが何度かあります。
ただ虐待はその現場を見ないと判断できませんし、虐待を疑ってもどう対応して良いか迷います。
もし園児が保護者から虐待を受けているんじゃないかと感じたら、保育士は感情的に正義感で動くんじゃなく、園児を助ける適切な行動を取る必要があります。
そこで今回は、虐待を疑うサインと保育士の具体的な行動についてお話します。
保育士、幼稚園教諭、保育教諭歴20年以上。幼稚園、保育園、認定こども園など転職して述べ500人以上の園児を保育し、保護者の相談に答えてきました。両親・祖母が教師・保育士なので、保育士は多分天職です。
詳しいプロフィール
児童相談所への虐待の相談件数
児童相談所への虐待の相談件数は年々増え、平成29年度は13万件を超えています。もちろん、重複する相談や勘違いも含まれますが、万単位で虐待があるのは間違いないです。
それだけ虐待が多いと、保育士が虐待に気付くケースもあります。具体的には言えませんが、わたしが気付いたのは、母親の育児ストレスによる暴力、父子家庭の父親の育児放棄でした。
もしかしたらわたしが気付いてないだけで、虐待を受けていた子は他にもいたのかもしれません。そこでまずは、子供がどのような様子だと虐待の恐れがあるか知っておきましょう。
子供が虐待を受けているかもしれないサイン
確実ではないですが、以下から複数当てはまる場合は、虐待を疑います。以下以外にも虐待を受けているサインはあるので、とにかく子供の様子が普段と違うか観察しなければいけません。
- 不自然なケガや青あざがある
- ケガや青あざの説明が不明瞭
- ケガをしてるのに治療の跡がない
- 2日連続で同じ服を着ている
- 明らかにお風呂に入っていない
- 食べるときの行動がおかしい
- 暴力を振るったり攻撃的になる
- 口が悪くなる、悪口が多くなる
- 大人を避けたり、反応しなくなる
- 肌を見せたり、触られることを嫌がる
不自然なケガや青あざがある
子供は、擦り傷よりも青あざがある方が不自然です。しかも、服で隠れる部分の複数の青あざは怪しいです。また、体にやけど跡があるときも注意が必要です。
ケガや青あざの説明が不明瞭
「○くん、どうしたのここ。ケガしちゃった?」と聞いてモゴモゴしてるときは、わかっていて隠そうとするときです。もしかしたら、保護者からごまかすように言われている可能性もあります。
ケガをしてるのに治療の跡がない
ケガをしているのに治療の跡がないのは、明らかに不自然です。保育士が発見できるケガを親が発見できないわけがありません。意図的に治療を受けていない可能性があります。
2日連続で同じ服を着ている
子供の服が2日連続で同じ場合は、ネグレクトの可能があります。もちろん、子供が同じ服が良いとダダをこねたり、何かの手違いで2日連続で同じ服になることもあります。
明らかにお風呂に入っていない
子供の体が朝から不自然に汚れていると、何日かお風呂に入ってないことも考えられます。この場合も、子供へのネグレクトを疑います。
食べるときの行動がおかしい
おやつをやたら欲しがったり、ランチで他の子の食べ物を欲しがったりするなどの変な行動が目立った場合は、家庭で食事が制限されている可能性があります。
暴力を振るったり攻撃的になる
以前よりもお友達を叩いたり、押したり、おもちゃを奪うなど、やたら攻撃的な行動が目立つのは、同じように大人から暴力を受けているからかもしれません。
口が悪くなる、悪口が多くなる
「てめー」「死ね」「バカ」など口が悪い子は、保護者の影響を受けている可能性は高いです。小さな子を叱るときに怒鳴るのは、教育ではなく心理的虐待です。感情に任せて怒鳴ることを虐待だと思ってない親は多いです。
大人を避けたり、反応しなくなる
普段から怒鳴られたり、乱暴な言葉づかいで叱られることが多いと、大人を避けたり、名前を呼んでも反応しなくなる可能性があります。
肌を見せたり、触られることを嫌がる
体に触られることを嫌がったり、肌を見せることを嫌がっている子供は、体の傷を見せたくなくて拒否している可能性があります。
虐待のサインを見つけたときの保育士の対応
子供に虐待のサインを見つけても軽率な行動は控えて、以下の対応をしましょう。
- その子の様子を見て記録を取る
- 主任保育士と園長に相談する
- 明るく話しかけてケガなどの理由を聞く
- 保護者と積極的に世間話をする
- 保護者と話し合いの機会を設ける
- 状況証拠を持って児童相談所に相談する
その子の様子を見て記録を取る
まず様子がおかしいと思ったら、いつも以上にその子を観察してください。また、どのように様子がおかしいのか、普段と違う様子を「日付+気付いたこと」で記録にとってください。
主任保育士と園長に相談する
心配しすぎと思わずに、早めに主任保育士と園長に相談します。もし虐待があるとしたら、すぐに救わなければいけません。管理職含めてその子の様子を観察してください。
また、体に傷やアザがある場合は、写真を撮ることを園長に話して、記録しておきましょう。
明るく話しかけてケガなどの理由を聞く
その子にも明るく話しかけて、傷やアザができている理由を聞いてください。もし答えがはっきりしない場合は、変に問い詰めず「気をつけてね。」と話したり、ケガの治療をしてください。
保護者と積極的に世間話をする
その間に保護者には積極的に話しかけて、世間話をしながら家庭内の様子を伺います。なるべく自然にケガの理由を質問したり、子供の様子がおかしいことを話して、どう答えるか確認してください。
また、悩んでいることがあれば、相談してほしいと伝えます。問い詰めて勘違いだと保護者との信頼関係は崩れますし、ごまかしたり嘘をついて目に見えない虐待が続く可能性は避けなければいけません。
保護者と話し合いの機会を設ける
もし悩み事を相談されて、家庭環境がおかしいと感じたら、虐待うんぬんは関係なく園長や民生委員を交えた話し合いを提案します。
事前に民生委員に内容を話して、予測できる対応策を用意してもらいます。民生委員は、家庭環境で困ったことを解決するために公共の福祉と連携を図る役割をしてくれます。
状況証拠を持って児童相談所に相談する
もし保護者が話し合いの機会を持とうとしなかったり、逆ギレするようなら、これまで記録したメモや写真などの状況証拠を持って、すぐに民生委員、児童相談所に相談してください。
保育士が虐待をすぐに通報しない理由
「そんな時間をかけないで、すぐ調べてもらえばいいじゃん!」と思う人もいるかも知れません。
ただ虐待があったとしても、すぐに児童相談所に通報した方が良いとは限りません。なぜなら親の保護能力がないと判断されると、その子は児童養護施設に引き取られるからです。
子供にとって親の存在は絶対。虐待する親でも子供は認められたい、愛されたいという気持ちがあります。そのため親が考え方を改め、福祉の力を借りて子供といっしょに安定した生活を取り戻すことが1番なんです(もちろんそうじゃない場合もあります)。
また民生委員や児童相談所に相談をしても、すぐに虐待が解決するとは限りません。児童相談所が親と何度も話して虐待の事実を明確にし、そのうえで子供を保護するには時間がかかります。
虐待で事件化するものの多くは、児童相談所に相談したあとに起こってますよね。
それよりは子供の近くにいる保育士が子供のおかしな様子を記録し、それをもとに民生委員や児童相談所が親と話し合った方が早く決着が付く場合が多いそうです。
「子供が虐待を受けているかも」という事実から目を背けずに、まずは疑って様子を観察しましょう。考えすぎかもしれませんが、勘違いなら何もなくて良かったと安心すれば良いんです。
どちらにしても虐待を疑うのはとても嫌な気分になりますし、虐待を確信してもすぐに動けないことで不安とイライラと心配で心臓がギュッとなります。
そういう場面を経験して保育士を辞めたくなる人も少なくないですし、実際に辞めるきっかけになることは仕方がないことだと思います。
子供を助けることは保育士の大切な仕事ですが、人を助けるためには自分の心と身体が健康でなければいけません。責任感だけで無理に仕事をしないようにしましょう。