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本ページにはプロモーションが含まれます。現在わたしは私立保育園(認定こども園)の保育士で、母親が公立保育園の元保育士(園長)です。公立保育園に務める保育士は地方公務員扱いなので、「公務員保育士」と呼ばれますね。
同じ保育士ですが、私立保育園と公立保育園では待遇が違います。年収調査でも私立保育士は保育士で調査しますが、公立保育士は地方公務員で調査します。
そんな公務員保育士と私立保育園の保育士、どっちが良いかと聞けば100人中99人は公務員保育士と答えるはず……。ただ、公務員保育士の給料や働き方などを知らない保育士も多いですよね。
- 公務員保育士と私立保育士ってどのくらい給料が違うの?
- 公務員保育士の休みとか待遇ってどんな感じ?
- 私立保育士から公務員保育士に転職ってできる?
もし保育業界で転職するなら、公立保育園も候補に入れましょう。公務員保育士になることは簡単ではないですが、給料も休みも働き方も私立保育士より公務員保育士の方が魅力的です。
今回は公務員保育士の給料など待遇事情、公務員保育士になれない場合はどうすればいいのかについてお話します。
保育士、幼稚園教諭、保育教諭歴20年以上。幼稚園、保育園、認定こども園など転職して述べ500人以上の園児を保育し、保護者の相談に答えてきました。両親・祖母が教師・保育士なので、保育士は多分天職です。
詳しいプロフィール
公務員保育士と私立保育士の給料の違い
公務員保育士と私立保育士の違いで1番知りたいのは給料ですよね。令和元年度の内閣府資料によると、私立保育士の年収362万円に対して、公務員保育士は363万円。
私立保育園 | 公立常勤 | |||
年数 | 年収 | 年数 | 年収 | |
主任保育士 | 21.7年 | 5,075,592円 | 25.1年 | 6,740,700円 |
保育士 | 11.2年 | 3,621,876円 | 11.0年 | 3,637,356円 |
保育補助者 | 4.9年 | 2,683,008円 | 4.9年 | 1,784,640円 |
私立保育士と公務員保育士の平均年収には差がありません。ただし、それは平均勤続年数がどちらも11年ほどのためです。
ところが主任保育士の年収を比べると、なんと160万円以上の差があります。
ちなみに私立保育士の年収360万円の手取りは約300万円ほど、主任保育士の年収507万円の手取りは417万円。一方、公務員保育士の主任の年収674万円の手取りは543万円ほどです。
私立保育士と公務員保育士の年収がこれだけ違うのは、ボーナスの存在が大きいです。ボーナス額は以下で紹介しているので、興味があれば見てください。
公務員保育士が私立保育士より給料が高い理由は?
公務員保育士は地方公務員で給料計算するから、単純に私立保育士の給料が安いから……が大きな理由ですが、公務員保育士は私立保育士に比べて昇給率が高く、離職率が低いという違いがあります。
- 公務員保育士は昇給率が高い
- 公務員保育士は離職率が低い
公務員保育士は昇給率が高い
一般的な地方公務員は、勤続20年ほど同じ昇給率で給料が上がります。40代中頃になると昇給率は緩やかになり、後は役職手当などで年収に差が出ます。
私立保育士の給料も年功序列の保育園は多いですが、昇給率は低く内容も不明確です。40代になると公務員保育士との年収格差は40-50万円になります。
公務員保育士は離職率が低い
厚生労働省の資料によると、平成27年度の常勤保育士の離職率は10.3%です。内訳は公務員保育士が7.1%、私立保育士が12.0%で、私立保育士の方が5%ほど離職率が高いですね。
常勤のみ | 勤務者 | 採用者数 | 採用率 | 退職者数 | 離職率 |
全体 | 320,196人 | 48,733人 | 15.2% | 32,823人 | 10.3% |
うち公営 | 116,862人 | 11,904人 | 10.2% | 8,330人 | 7.1% |
うち私営 | 203,334人 | 36,829人 | 18.1% | 24,493人 | 12.0% |
ただし保育士の離職率が高いわけではなく、公務員保育士と比べて公務員保育士の離職率が低いというだけ。公務員保育士の離職率が低いのは、私立保育士との働きやすさに違いがあるからです。
- 給料が高く、もらえる金額が明らか
- 有給・産休など休みを取りやすい
- 土曜保育を行う保育園が少ない
- 育休を満期で3年間取得できる
- 退職共済年金で将来に備えられる
たとえば私立保育士は出産で一度退職して、子育てが落ち着いてからパート保育士として復帰することが多いです。私立保育士の復帰は容易ですが、公務員保育士はそもそも辞める必要がありません。
公務員保育士と私立保育士の働きやすさ・待遇の違い
- 仕事内容や保育方針の違い
- 有給休暇の取りやすさの違い
- 産休・育休の取りやすさの違い
- 老後の年金制度の違い
- 勤務時間や残業の扱いの違い
- 転勤や移動の違い
- 保育の責任の重さの違い
仕事内容や保育方針の違い
公立保育園と私立保育園の仕事に大きな違いはありません。ただ公立保育園は保育のやり方や保育方針が自治体で決まっているので、保育園独自の保育は行いません。
対して私立保育園は独自の保育方針を掲げたり、新しいサービスを取り入れて特徴をもたせようとします。ただ突然新しいことを始めると、保育士の負担になります。
有給休暇の取りやすさの違い
有給休暇を消化しやすいのも公務員保育士です。保育園の運営上、公務員保育士でも有給を取りづらい時期はありますが、通常の地方公務員でも同じです。
公立保育園と私立保育園の違いは、公立保育園の方が法律を厳格に守る点です。有給休暇は一定日数の消化が義務化されたため、公立保育園の方がより有給を取りやすいと言えます。
また公立保育園は私立保育園よりも土曜保育の実施割合が低く、完全週休2日制も少なくありません。
産休・育休の取りやすさの違い
産休・育休の取得は当たり前ですが、それでも私立保育士は気を使って「短めにしよ……。」と考える人が多いです。また、産休・育休きっかけでパワハラ・マタハラを受けることもあります。
一方、公務員保育士は産休・育休はきっちり取ることができます。しかも公務員保育士の育休は延長なしで3年間取れるため、余裕を持った子育てができます。
老後の年金制度の違い
私立保育園で社会保険に加入すると、将来は基礎年金と厚生年金分が支給されます。
一方、公務員保育士は共済年金に加入しているため、基礎年金と厚生年金の他に退職共済年金を受け取ることができます。
勤務時間や残業の扱いの違い
公立保育園は時間にきっちりしています。仕事時間と休憩時間は分かれてますし、残業代も出ます。
一方、私立保育園は仕事と休憩時間の境目はありません。わたしのように「特技は早食い」の保育士は多いと思います。残業代も出ないことが多いため、表面上の残業時間は短く見えます……。
私立保育園では、残業に悩む保育士がたくさんいます。もちろん体制を改善した良い保育園もたくさんあるので、以下の記事でその特徴を知っておきましょう。
転勤や移動の違い
私立保育園は、その保育園が気に入ったら働き続けることができます。また保育園がグループ経営の場合、移動希望を出せばグループ内で移動することも可能です。
公立保育園は、2-3年単位で別の公立保育園に転勤します。ただ、ほぼ自治体内移動なので生活環境は変わりません。わたしの母親も何度か転勤しましたが、家庭内の変化はとくになかったですね。
保育の責任の重さの違い
保育の責任の重さは公立保育園も私立保育園も関係ありませんが、公立保育園は児童相談所預かりの家庭や生活保護の家庭など、私立保育園に比べて家庭環境が複雑な傾向があります。
保育士は子供の個性や家庭環境を把握して保育をしているため、そういう意味では公立保育園の方が責任の重さを感じる保育士が多いかもしれません。
公務員保育士になるにはどうすればいい?
公務員保育士は時期も人数も不定期で、毎年同じ人数採用するわけじゃありません。倍率も3倍-20倍で簡単じゃないですが、挑戦する価値はあります。
公務員保育士の受験資格
公務員試験の受験資格は自治体で違いますが、まずは「保育士資格を持っていること」、そして「その自治体に住んでいること」です。
年齢制限は30歳前後が多いですが、35歳まで可能な地域もあります。詳細は自治体に確認しましょう。
公務員保育士試験の募集時期と実施時期
公務員保育士試験の時期も、自治体によって違います。一般的には6-8月、12月ごろに試験が行われることが多いですが、その他の時期も割とあります。
募集はだいたい試験実施の1-2か月前に開始します。自治体のサイトや以下の公務員試験情報サイトでも検索できます。
保育士の公務員試験日程一覧 | 公務員試験情報サイト【KoumuWIN!】
公務員保育士試験の試験内容
公務員保育士試験の試験内容は、一般教養を見る「教養試験」、保育知識を見る「専門試験」、人間性を見る「面接」、ピアノ、読み聞かせ、工作などの「実技試験」、体力を見る「体力試験」があります。
上記は簡単にまとめましたが、詳しい公務員保育士試験の試験内容、年齢制限や倍率のお話は以下の記事で説明しています。
公務員保育士に転職できない人はどうする?
学生時代のわたしは公務員保育士と私立保育士の違いを考えず、いろんな保育方針がある私立保育園の方が面白い程度の認識で就職活動をしていました。
もしあなたに公務員保育士の受験資格があるなら、ぜひ挑戦してください。もちろん私立保育士がダメなわけではありません。
全体的には私立保育園より公立保育園の方が給料など待遇が良いことは明らかです。ただ私立保育園でも平均より給料が高く、休みが取りやすい保育園はたくさんあります。
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