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保護者が養育できない赤ちゃんや親がいない赤ちゃんを預ける「乳児院」という施設を知っていますか?知らない人も多いと思いますが、簡単に言うと児童養護施設の乳児版です。
児童養護施設とは、貧困や保護者の病気、虐待などの原因で生活が困難なときに子供を長期(短期も)で預かる施設のことです。
ただ乳児院を自分には関係がない施設だと思わないでください。もしあなたが長期入院をすることになったとき、また家庭環境が変化したときに、赤ちゃんを預ける可能性があります。
また、乳児院はショートステイやトワイライトステイなどの一時預かり施設としても使われることがあるので、いざというときのために知っておいた方が良いと思います。
- 乳児院ってどんな施設なの?役割は?
- 乳児院に在所している子ってどんな子?
- 乳児院を利用するにはどうすればいい?
今回は乳児院について基本的なことをお話します。子供の親として、また子供を守る立場の社会人として乳児院の大切な役割を知っておきましょう。
なお、乳児院に興味があって働いてみたい人は以下を参考にしてください。乳児院で働くには一定の資格が必要です。資格についても簡単に解説しています。
保育士、幼稚園教諭、保育教諭歴20年以上。幼稚園、保育園、認定こども園など転職して述べ500人以上の園児を保育し、保護者の相談に答えてきました。両親・祖母が教師・保育士なので、保育士は多分天職です。
詳しいプロフィール
乳児院ってどんな施設?
乳児院とは、貧困や保護者の病気、虐待などの原因で生活が困難なときに、乳児を長期(短期も)で預かって養育する施設のことです。または、一時預かり施設として一般的に利用されることもあります。
乳児院に入所する子供の対象年齢は新生児から2歳までですが、施設によっては6歳ごろまで在所できる施設もあります。
乳児院は、保育士や児童指導員、看護師資格を持つ職員が中心で働き、医師、栄養士など多くの職員と連携して運営されています。
全国の乳児院の数
全国乳児福祉協議会によると、全国には130以上の乳児院があり、その多くは児童養護施設、保育園、老人福祉施設、病院などと併設されています(単独施設もある)。
厚生労働省の調査によると、全国には132の乳児院があり、3,828人の定員の内3,105人の乳児が入所してます(稼働率81%)。
平成26年社会福祉施設等調査の概況 統計表 第1表 総括表|厚生労働省
乳児院の長期入所と短期入所の理由
乳児院の目的は大きく2つ、乳児の長期入所と短期入所をするためです。ただし、それぞれの入所理由はまったく違います。
父の死亡|2人(0.06%)
母の死亡|24人(0.76%)
父の行方不明|4人(0.13%)
母の行方不明|79人(2.51%)
父母の離婚|56人(1.78%)
両親の未婚|195人(6.20%)
父母の不和|41人(1.30%)
父の拘禁|18人(0.57%)
母の拘禁|121人(3.84%)
父の入院|7人(0.22%)
母の入院|96人(3.05%)
家族の疾病の付添|11人(0.35%)
次子出産|19人(0.60%)
父の就労|11人(0.35%)
母の就労|123人(3.91%)
父の精神疾患等|13人(0.41%)
母の精神疾患等|686人(21.80%)
父の放任・怠だ|9人(0.29%)
母の放任・怠だ|340人(10.80%)
父の虐待・酷使|82人(2.61%)
母の虐待・酷使|186人(5.91%)
棄児|18人(0.57%)
養育拒否|217人(6.90%)
破産等の経済的理由|146人(4.64%)
児童の問題による監護困難|19人(0.60%)
その他|547人(17.38%)
とくになし|-人(0.00%)
不詳|77人(2.45%)
長期入所は、「父または母の精神疾患等」22.2%、「父または母の放任・怠だ(たいだ)」11.1%、「父または母の虐待・酷使」8.5%、「養育拒否」6.9%などネガティブな理由が多いですね。
短期入所(一時預かり含む)の理由は、「父または母の就労」4.4%、「父または母の入院」3.3%、また冠婚葬祭や出張などは「その他」17.38%に含まれるんじゃないかと思います。
乳児院が乳児を預かる期間
乳児院の在所期間は半数が短期(一時預かり含む)で、1か月未満が26%、6か月未満を含めると48%となっています。
一時預かりには、入所理由の「父または母の就労」「父または母の入院」「その他」に加えて、育児疲れや育児療養を含む「父または母の精神疾患等」が考えられます。
乳児院の退所
乳児院の長期在所は0歳児が50%、1歳児が30%ほどで、年齢制限を迎えるとそれぞれ乳児院を退所していきます。
退所は実の両親や親族などの保護者に引き取られたり、特別養子縁組で里親に引き取られますが、引き取り手がいない場合は児童養護施設に措置変更されます。
現在、児童養護施設にいる子供は約3万人で、その中の約5400人(18%)が乳児院から児童養護施設に移動した子供たちです。
乳児院の利用方法、乳児を預けるには?
では実際に、乳児院の利用方法などを押さえておきましょう。
乳児院の入所方法
一時預かりをお願いするにしても、長期入所をお願いするにしても、まずは自治体の窓口に相談してください。長期入所の必要がある場合は、児童相談所に理由を説明することになります。
児童相談の結果、保護の必要があると判断された場合のみ、一時保護を含めた保護措置※として乳児院に預けられます。乳児を長期で乳児院に預けることは簡単じゃありません。
参考児童相談所では、乳児の一時保護対応ができないことが多いので、児童相談所から乳児院に対して一時保護委託されています。
乳児院の利用料金
乳児院の長期入所の利用料金は、国と自治体の公費で賄われています。ただし、これでは運営費が不足するので、児童福祉法によって世帯収入に応じた利用料が発生します。
基本的に生活保護世帯は0円、また市町村民前の非課税世帯は0円、あとは年収によって月額数千円から月額10万円以上までさまざまです。
一時預かりの場合は「子どもショートステイ」や「トワイライトステイ」で乳児院を利用することになるので、それぞれの利用料金を自治体に確認してください。
乳児院の保護者支援
乳児院では、乳児を預かるだけじゃなく、乳児院に預けざるを得ない保護者の心のケアにも取り組んでいます。
たとえば、保護者を対象にしたカウンセリングや育児方法の指導の他、赤ちゃんが家庭に帰ってからの生活をシミュレーションできる親子ルームを設けている施設もあります。
乳児院退所後のアフターケア
乳児院では、乳児が退所した後のアフターケアも行っています。
たとえば、保護者に引き取られた子供の家を尋ねて、聞き取り調査やカウンセリングをしたり、児童養護施設に移動した子供を尋ねて、施設や子供から聞き取り調査、子供のカウンセリングを行います。
乳児院の存在はとても大切です!
乳児院を使う理由はさまざまですが、どうしてもネグレクトや虐待、貧困などのネガティブな理由でクローズアップされることは多いです。そのため、自分には関係がないと思う人も多いでしょう。
一方、地域の子育て相談や一時預かりで乳児院に助けられたママもいると思います。乳児院がなければ、その後ネガティブな理由で乳児院を利用をすることになった人もいるかもしれません。
そのため自分が乳児院とは関係ないと思っても、乳児院の存在意義は知っておいてください。
そして、もし今後身近に子育てで悩んでいる人がいたら、気軽に自治体に児童相談を行うように勧めてあげてください。乳児院の短期利用の存在は、相談員から聞くことになると思います。
わたしたちが乳児院の存在を理解することで、ネガティブな理由での乳児院の利用が少なくなり、本当の両親と暮らしていける赤ちゃんが増えるかもしれません。
乳児院は基本的に保育士、看護師、児童指導員など何らかの資格を持つ人が働く施設ですが、パート勤務なら資格は必要ありません。
わたしも保育士として何度か訪問し、お手伝いをした経験もあります。もし乳児院で働いてみたい、子供の成長を助ける社会貢献をしたいという人は以下を参考にしてください。
他にも、育児中のママを助けてくれる施設や子育て支援事業はいろいろあります。
これらの子育て支援事業や子育てを助けてくれる施設は、どのような人でも平等に使うことができます。
忙しさに追われているワーキングマザーだけじゃなく、たまには一人で息抜きをしたい人、突発的な用事で子供をみることができない人は積極的に活用してください。