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児童養護施設は保護者が子供を養育できないときに預ける施設、親がいない子供が生活する施設などのイメージがありますよね。そのため、
と思う気持ちもわかります。ただ児童養護施設は、子供が小さい間にあなたが長期入院をすることになったとき、また家庭環境の変化などでお世話になる可能性がある施設です。
- 児童養護施設ってどんな施設なの?役割は?
- 児童養護施設に在所している子ってどんな子?
- 児童養護施設を利用するにはどうすればいい?
子供の親、また子供を守る立場の社会人なら、このような児童養護施設の役割や使い方など基本的なことは知っておいた方が良いと思います。
なお、児童養護施設に興味があって働いてみたい人は以下を参考にしてください。児童養護施設で働くには一定の資格が必要です。資格についても簡単に解説しています。
保育士、幼稚園教諭、保育教諭歴20年以上。幼稚園、保育園、認定こども園など転職して述べ500人以上の園児を保育し、保護者の相談に答えてきました。両親・祖母が教師・保育士なので、保育士は多分天職です。
詳しいプロフィール
児童養護施設ってどんな施設?
児童養護施設とは、貧困や保護者の病気、虐待などの原因で生活が困難なときに、子供を長期(短期も)で預かる施設のことです。または、一時預かり施設として一般的に利用されることもあります。
入所する子供の対象年齢は2歳-18歳までですが、条件を満たせば20歳まで在所できる施設もあります。
児童養護施設の目的は、養護が必要な子供や保護者の養護が適切じゃない子供に、安定した生活環境の中で生活指導、学習指導などを行って、心身の成長と自立を支援することです。
児童養護施設も乳児院と同様、保育士や児童指導員、看護師資格を持つ職員が中心で運営されています。
全国の児童養護施設の数
平成26年の厚生労働省の調査によると、全国には590の児童養護施設があり、33,008人の定員の内27,468人の子供が入所しています(稼働率83%)。
平成26年社会福祉施設等調査の概況 統計表 第1表 総括表|厚生労働省
児童養護施設の長期入所と短期入所の理由
児童養護施設の目的は大きく2つ、子供の長期入所と短期入所をするためです。ただし、それぞれの入所理由はまったく違います。
父の死亡|142人(0.47%)
母の死亡|521人(1.74%)
父の行方不明|141人(0.47%)
母の行方不明|1138人(3.80%)
父母の離婚|872人(2.91%)
両親の未婚|-人(0.00%)
父母の不和|233人(0.78%)
父の拘禁|419人(1.40%)
母の拘禁|1037人(3.46%)
父の入院|180人(0.60%)
母の入院|1124人(3.75%)
家族の疾病の付添人|-人(0.00%)
次子出産|-人(0.00%)
父の就労|963人(3.21%)
母の就労|767人(2.56%)
父の精神疾患等|178人(0.59%)
母の精神疾患等|3519人(11.74%)
父の放任・怠だ|537人(1.79%)
母の放任・怠だ|3878人(12.94%)
父の虐待・酷使|2183人(7.28%)
母の虐待・酷使|3228人(10.77%)
棄児|124人(0.41%)
養育拒否|1427人(4.76%)
破産等の経済的理由|1762人(5.88%)
児童の問題による監護困難人|1130人(3.77%)
その他|3619人(12.07%)
とくになし|-人(0.00%)
不詳|857人(2.86%)
長期入所は、「父または母の虐待・酷使」18.0%、「父または母の放任・怠だ(たいだ)」13.8%、「父または母の精神疾患等」12.3%、「破産等の経済的理由」5.9%などネガティブな理由が多いです。
短期入所(一時預かり含む)の理由は、乳児院と同じで「父または母の就労」5.8%、「父または母の入院」4.3%となっています。もし片親の家庭だと、入院で利用する可能性は考えた方が良いですね。
児童養護施設の年齢別児童数と在所期間
児童養護施設に入所している29,979人の年齢別児童数、在所期間(入所期間)とその割合は以下のようになります。
年齢別児童数と割合
0歳|2人(0.01%)
1歳|30人(0.10%)
2歳|366人(1.22%)
3歳|933人(3.11%)
4歳|1,299人(4.34%)
5歳|1,417人(4.73%)
6歳|1,598人(5.33%)
7歳|1,556人(5.19%)
8歳|1,712人(5.72%)
9歳|1,910人(6.38%)
10歳|2,022人(6.75%)
11歳|2,101人(7.01%)
12歳|2,283人(7.62%)
13歳|2,242人(7.48%)
14歳|2,414人(8.06%)
15歳|2,471人(8.25%)
16歳|2,130人(7.11%)
17歳|1,861人(6.21%)
18歳以上|1,607人(5.36%)
2-3歳ごろまでは乳児院にいる子も多いため割合は少ないですが、それ以降の年齢では4-8%とまんべんなく児童養護施設に在所しています。
在所期間別児童数と割合
1年未満|4,637人(15.55%)
1年以上2年未満|4,042人(13.55%)
2年以上3年未満|3,415人(11.45%)
3年以上4年未満|2,748人(9.21%)
4年以上5年未満|2,567人(8.61%)
5年以上6年未満|2,166人(7.26%)
6年以上7年未満|1,824人(6.12%)
7年以上8年未満|1,586人(5.32%)
8年以上9年未満|1,469人(4.93%)
9年以上10年未満|1,222人(4.10%)
10年以上11年未満|1,064人(3.57%)
11年以上12年未満|978人(3.28%)
12年以上|2,105人(7.06%)
年齢別児童数と在所期間別児童数を見る限り、85%以上の児童は1年以上児童養護施設に在所しています。また、半数は4年以上、10年以上の在所している児童も14%ほどいます。
児童養護施設の退所
では、児童養護施設にいる子供は、どのように児童養護施設を退所していくんでしょうか。
児童養護施設から里親委託は16.3%、別の児童養護施設へは2.9%、自立支援施設へは14.1%、ファミリーホームへは15.4%、援助ホームへは23.7%で、これらの合計が約73%です。
残り27%は家族や親族に引き取られたか、単身生活を始めたことになります。
施設によって多少違いますが、在所には18-20歳未満という年齢制限があり、年齢制限を迎えるか、就職して自活能力ができたと認められたときに保護措置が解除されます。
児童養護施設の利用方法、入所方法に関して
では実際に、児童養護施設の利用方法などを押さえておきましょう。以下は一時預かりではなく長期入所の場合です。
児童養護施設に長期入所するということは、児童相談所の保護措置を受けるということです。つまり、保護措置を受ける時点で(親がいる場合は)親の保護能力がないとみなされます。
そのため、「今は生活が苦しいから、とりあえず子供を児童養護施設に入れたい。」という理由で簡単に入所できるわけじゃありません。
乳児院と同じく、地域にある児童相談所で育児の悩みや家計状況、家庭環境を相談をして、児童相談所が保護の必要があると認めたら、まずは児童相談所で一時保護を行います。
さらに、一時保護の間で以下の保護措置の必要性があると判断されると、児童相談所の保護のもとで児童養護施設に入所することになります。
「環境上養護を要する」児童の定義
父母と死別した児童
父母に遺棄された児童
家庭環境不良の児童(父母の行方不明、長期入院、拘禁、離婚、再婚、心身障害など)
保護者がいても児童虐待を受けている児童
以上のように、「保護者の健康上・経済上の理由などで監護を受けられない児童、または保護者の元で生活させるのが不適当(家庭環境が悪く、保護者のもとで生活させるのは無理)」な状況にある」と児童相談所が判断した児童。
児童養護施設の現状を知っておこう!
乳児院と児童養護施設の違いはいろいろありますが、1番わかりやすい違いは対象年齢ですね。乳児院は0-2歳未満が入所する施設で、児童養護施設は2歳以上18歳未満の子供が入所する施設です。
子供を愛していて家庭環境や家計にも問題がなく、自分も健康という人には児童養護施設は少し遠い存在かもしれません。
ただ、長期入所している子供が全国2万人以上いることも人の親として知っておくべきだと思います。
すぐに児童養護施設に頼る(頼れる)わけではないですが、1つの可能性として児童養護施設の実態や現状を知っておくと安心感につながります。
社会貢献の一環として児童養護施設で働きたい人も増えています。児童養護施設で働いてみたい人は以を参考にしてください。
他にも、育児中のママを助けてくれる施設や子育て支援事業はいろいろあります。
これらの子育て支援事業や子育てを助けてくれる施設は、どのような人でも平等に使うことができます。
忙しさに追われているワーキングマザーだけじゃなく、たまには一人で息抜きをしたい人、突発的な用事で子供をみることができない人は積極的に活用してください。