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就職や転職したばかりの保育士は、毎日会う保護者との話し方、会話に悩んでいます。


「あの人話しかけるなオーラが出てて怖い……。」「他の保育士だと態度がぜんぜん違うんだけど……。」「挨拶はできるけど、話しかけるネタがない……。」
というのは、保育士なら共感してもらえるはずです(^_^;)
保育士が子供と良い関係を築くには、保護者との信頼関係が大切です。ただ子供が10人いると、その後ろには20人ほどの保護者が……。人見知りには辛いですが、保育士は保護者対応を避けて通れません。
保護者と会話するには、いくつかコツがあります。コミュニケーション能力が高い人は「話しかけるだけじゃん。」と思うかもしれませんが、会話が苦手な保育士もたくさんいます。
保護者との距離感が取りづらい、信頼関係を築く方法を知りたい人がこの記事を読めば、保護者とこれまでほど緊張しない・気負わないで会話をする流れやコツが理解できるはずです。
保育士歴20年以上。幼稚園、保育園、こども園など転職して、述べ500人以上の園児を保育し、ママ・パパの相談に答えてきました。両親・祖母が教師・保育士なので、保育士は多分天職です。
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保育士が保護者と仲良くなる会話の方法


子供を迎えに来ても、さっと来てさっと帰る人だと話しかけづらいですよね。ただ、明日から保護者と仲良く話せる!という方法はないので、以下に気をつけて徐々に話せる土台を作りましょう。
- 挨拶の後に一言だけ付け足す
- いつでも明るく笑顔で話しかける
- あえて保護者の名前で呼びかける
- 今日の子供の近況を報告する
- 保護者の話にしっかり共感する
- 保護者が答えやすい質問をする
- 手間にならない適度なお願いをする
挨拶の後に一言付け足す
「おはようございます。」「こんにちは。」など挨拶の後に一言付け足してください。付け足す言葉は何でも構いません。無難なのは天気ですね。
「おはようござます。今日は寒いですね。」「こんにちは。○○ちゃん今日も元気にママのこと待ってましたよ。」など、難しいことを言う必要はありません。
いつでも明るく笑顔で話しかける
保護者が難しそうな顔をしていても、明るく笑顔で話しかけてください。機嫌が悪いときはそっけない対応ですが、機嫌が良いときは何か一言返ってきます。
そっけない対応を気にする必要はありません。あなたが明るく話しかけていれば、保護者も気持ちを切り替えて明るく返してくれることがあります。
笑顔で話しかけると、相手が好意を抱いているという感情を持ちやすいです。相手が好意を持っていると感じると、自分も相手に好意を抱きやすくなります。これを心理学で「好意の返報性」と呼びます。
あえて保護者の名前で呼びかける
保護者の名前は早めに覚えて、名前で呼んでください。近くにいる場合は「お父さん」「お母さん」で良いですが、呼びかける場合は名字で「○○さん」が良いと思います。
「あ、○○さん、おはようございます。」など挨拶と合わせて名前を呼ぶと、親近感が高くなります。名前を呼ぶと親近感が増す効果を「ネームコーリング効果」と言います。
今日の子供の近況を報告する
迎えに来た保護者に、今日の子供の近況を報告してください。子供の近況報告だと、保護者も感想を返しやすいです。内容は、良いことかトラブルのどちらかです。
良いことは「給食を残さず食ましたよ。」「積極的にお返事できましたよ。」など、トラブルは「ちょっと吐き戻しちゃったんです。」「転んで擦りむいちゃったんです。」などです。
保護者の話にしっかり共感する
保護者から「今日、○○があったのよ。」「この前の○○がね~。」などの話題が出たら必ず共感してください。「それは大変でしたねぇ。」「良かったですねー。」などしっかり共感すると、保護者も次の話題が出しやすくなります。
相手の気持を汲み取って共感する行為を「共感的理解」と言います。共感的理解ができると、相手から信頼感を得やすくなるだけじゃなく、保護者の性格や特徴も理解できるようになります。
保護者が答えやすい質問をする
保護者の性格や特徴がわかるようになったら、こちらから質問してください。相手が知ってそうなこと、好きなことをピンポイントで聞くと答えが返ってきます。
「近所で良い居酒屋さん知ってますか?新しい保育士の歓迎会があるんです。」「○○さんのお仕事はパソコン関係なんですよね。どうしたらタイピング早くなるんですか?」などです。
手間にならない適度なお願いをする
先ほどの質問などで「知ってますよ。」「わかりますよ。」と返されたら、「コツを教えてもらえませんか。」「どうすれば良いんですか?」などお願いしましょう。
もちろん手間がかかるお願いはやめた方が良いですが、口頭で解決するお願いをすれば会話のキャッチボールになりますし、相手からより話題を引き出すきっかけになります。
一足飛びに、保護者に気に入られる話し方や会話のネタはありません。ただ会話のネタがなくても、挨拶や軽い声掛けを毎日続ければ、どこかで共通の話題は出てくるものです。


保護者との会話のポイント・コツ
- 会話するまで時間をかけても良い
- 保護者ではなく○○さんと認識する
- あまり丁寧になりすぎない
- 保護者全員と仲良くなる必要はない
会話するまで時間をかけても良い
保育士は保護者とほぼ毎日会います。そのため、会話をするまでに1か月、2か月かけても良いんです。
毎日会う人なので、会話がなくても笑顔で挨拶をすれば好感を持たれるようになります。人は目にする回数が増えるほど好意を持つ傾向があります。これを「ザイオンス効果」といいます。
保護者ではなく○○さんと認識する
保育士にとって保護者は保護者と思うかもしれませんが、保護者にとってあなたは○○先生です。ちゃんと個人として認識しています。
そのため、保護者とひとまとめと思うんじゃなく、一人ひとりを「○○さん」、「○○ちゃんのママ」と認識してください。認識すれば相手の特徴が見えてくるはずです。
あまり丁寧になりすぎない
タメ口や失礼な言葉はダメですが、丁寧過ぎる言葉も壁ができます。「ですます」は守って口調を柔らかくするなど、時間をかけて親しみがある口調に変えていきましょう。
保護者全員と仲良くなる必要はない
保護者全員と平等に仲良くなるために無理に会話をしようとする保育士もいますが、話したいかどうかは人それぞれです。
保護者が嫌そうなら無理に会話を続ける必要はありません。会話は自然な挨拶から生まれるものなので、名前を呼んで、明るく元気に挨拶するだけでも悪い印象は与えないものです。


保育士が保護者対応でやっちゃダメなこと


保育士は子供の様子を伝えるために、保護者と上手な連携が必要です。毎日顔を合わせるので、距離が近くなるのは良いことです。
ただ、保護者にはいろんな性格の人がいます。保護者と保育士が仲良くなりすぎることを嫌がる人もいます。保護者と保育士が仲良くなると、子供を贔屓すると考える人もいます。
そのため、保育士は保護者と適度な関係性を保って、深入りしないことが大切です。ドライな言い方をすると、保育士にとって保護者は仕事対象だということを忘れちゃダメなんです。
以下の保護者対応は、他の保護者に対して誤解を招きます。保育園の信用にも関わることなので、保育士は気をつけたいところです。
- タメ口、馴れ馴れしい口調
- あだ名の呼びかけ
- LINEなど連絡先の交換
- いっしょに遊びに行く
- 他の家庭の話をする
- 保育園の内部事情を話す
タメ口、馴れ馴れしい口調
フレンドリーな保護者と話すと、つい話しがはずんで馴れ馴れしい口調になることがあります。ただ、「向こうの口調に合わせた方がいいのかな?」というのは間違い。
仕事だということを忘れないでください。他の保護者や同僚保育士が、会話を聞いていることもあります。もちろん、タメ口は論外です。
あだ名の呼びかけ
若い保育士に対して、「○○ちゃん」と呼ぶ保護者もいます。言われる分には問題ないんですが、仲良くなっても保護者をあだ名で呼んじゃダメですよ。
保護者の呼び方は保育園の文化で違いますが、「○○さん」「お父さん」「お母さん」が一般的です。また、他の保護者と話すときは、「○○さん」や「○○ちゃんのママ」ですね。
LINEなど連絡先の交換
「ねー先生LINE教えて。」と言われて教える保育士もいますが、連絡先の交換は基本NGです。
保育士は1対多で仕事をしています。1人と連絡先を交換したら、全員とLINEを交換しないといけない可能性もあります。あなたは毎日保護者からのLINEの嵐に耐えられますか?
「保護者と連絡先は交換しないでください。」と保育士に釘を刺す保育園も多いです。もし保護者から連絡先教えてと言われたら、「すみません、保育園の就業規則で禁止されてるんです。」と返しましょう。
いっしょに遊びに行く
たまたま保護者と趣味がかぶったときに、「じゃあ今度いっしょに行こうよ。」と誘われることもありますが、もちろんいっしょに行くのはダメです。
断り方も先ほどと同じで、「すみません、保育園の就業規則で禁止されてるんです。誘っていただいてありがとうございます。」と返しましょう。私的な食事会も避けましょう。
他の家庭の話をする
保護者の中には、他の家庭の事情を聞いてくる人もいます。こういうご時世なので、「すみません、他のご家庭のことは話せないんです。」と答えれば問題ないと思います。
ただ、話を聞き出すのがうまい人もいます。たとえば、「ねぇ、○ちゃんが○ちゃんいじめてたって知ってる?」「○○さんとこ仲悪いから、○ちゃん最近しょんぼりしてない?」とカマをかけられることも。
どちらにしても他の家庭のことなので、「え、そうなんですか。知りませんでした。」くらいに留めておくと良いですね。
保育園の内部事情を話す
あなたが不満に思っている保育園事情や自分の待遇など、ぶちまけたい気持ちがあることはわかります。ただ、どれだけ仲良くなっても、それを保護者に言うのはダメです。
あなたが思う不満は単なる主観です。この保育園のことが好きな保育士や保護者がいたら混乱しますし、不安を感じます。もちろん、あなたも良い目で見られなくなります。


保護者との信頼関係はゆっくり作っていく
子供が保育園に通う期間は3年-6年ほどです。そのため、多い場合は1人の保護者と6年間で1000回以上顔を合わせます。そう考えると自然に仲良く会話ができた方が良いと思いますよね。
ただ、「1か月で全員と仲良くならないと……。」「早く信頼関係を作らないと……。」なんて思わなくてもだいじょうぶです。だって、保護者の顔と名前を覚えて一致させるだけでけっこう大変ですよ。

初めは気負わず、名前と顔を覚えることから始めましょう。もし名前が出てこなくても、まずはニコニコ明るく「おはようございます。」でOKだと思います。
もちろん保護者と仲良く話せるようになっても、やっちゃいけないこと、超えちゃいけない一線はあります。今回お話したルールを守って、誠実な保護者対応ができれば良い関係は築けるはずです。
保育園では、保護者以外の人間関係でも悩むことがありますね。同僚、先輩、園長などの人間関係で悩んでいる人は、以下も参考にしてください。