この記事は約 15 分で読めます
本ページにはプロモーションが含まれます。わたしも厚生労働省の資料で調べるまでは、保育士の離職率は高いと思ってました。ところが、保育士は世間の印象ほど離職率が高いわけではないんです。
そんな間違った印象のせいで保育士を辞めたり、復帰を躊躇する人がいるのはもったいないことです。
- 保育士の離職率ってどれくらい?他の職業との違いは?
- 1年目-3年以内の保育士の早期離職ってどれくらい?
- 離職率が低いのに保育士が足りないのはなんで?
- 離職率が高い保育園と低い保育園の特徴を教えて。
保育士の現在の離職・就労状況を知ること、離職率が高い保育園・低い保育園の特徴を知ることは、今後のあなたの身の振り方を考える上で大きな参考になります。
また保育士を辞めたい・違う保育園に転職したいと思っている人のために、離職率が低い保育園の探し方もわかりやすく解説するので、最後まで読んでください。
保育士、幼稚園教諭、保育教諭歴20年以上。幼稚園、保育園、認定こども園など転職して述べ500人以上の園児を保育し、保護者の相談に答えてきました。両親・祖母が教師・保育士なので、保育士は多分天職です。
詳しいプロフィール
保育士の離職率はどれくらい?計算方法は?
- 保育士の離職率は10.3%!全労働者と比較
- 離職率の計算方法とかんたんな事例
- 保育士の採用率と離職率の関係
- 保育士より離職率が高い仕事・業界
- 保育士1年目-3年以内の早期離職率
保育士の離職率は10.3%!日本全体と比較
厚生労働省の調査によると、平成27年度の保育士の離職率は10.3%(公営7.1%、私営12.0%)、対して平成28年度の日本全体の常用労働者の離職率は15%です。と言われてもピンと来ないですよね。
離職率の計算方法とかんたんな事例
離職率とは、年初の常用労働者(働いている正社員やパート)の数に対して離職した割合のことです。一方、入職の割合を入職率(採用率)と言います。
従業員10万人の会社で年間2万人辞めれば、離職率は20%です。この会社の入職率が20%未満だと社員数が減ります。たとえば、離職率20%で入職率15%の会社だと社員数は9.5万人になります。
保育士の採用率と離職率の関係
平成27年度の厚生労働省の資料によると、保育士の採用者は4.8万人(採用率15.2%)、退職者数は3.2万人(離職率は10.3%)なので、保育士は差し引き1.6万人も増えています。
勤務者 | 採用者数 | 採用率 | 退職者数 | 離職率 | |
全体 | 320,196人 | 48,733人 | 15.20% | 32,823人 | 10.30% |
うち公営 | 116,862人 | 11,904人 | 10.20% | 8,330人 | 7.10% |
うち私営 | 203,334人 | 36,829人 | 18.10% | 24,493人 | 12.00% |
見てわかる通り私立保育園の方が離職率が高いですね。公務員保育士は給料が高くて待遇も良いため、就業状況も安定しています。
とは言え公務員保育士3600人に対して私立保育士は12000人増えているので、それだけ保育士需要が高く、就労意欲も高いことがわかります。
保育士より離職率が高い仕事・業界
次に、保育士と一般的に離職率が高い業界を比べてみます(平成27年度雇用動向調査|厚生労働省)。
- 飲食・宿泊業界(離職率30.0%)……居酒屋店員、宿スタッフなど
- 娯楽・サービス業界(離職率20.3%)……パチンコ店員、カラオケ店員、美容師など
- 不動産業界(離職率15.9%)……不動産会社社員など
- 教育・学習支援業界(離職率15.0%)……教材販売員、塾講師など
- 医療福祉業界(離職率14.8%)……看護師、介護士、保育士など
保育士より離職率が高い業界・業種はたくさんあります。保育士は5番目の医療福祉業界に含まれます。
医療福祉業界の離職率は14.8%なので、保育士よりも看護師、介護士の方がかなり離職率が高いことがわかります。
保育士1年目-3年以内の早期離職率
保育士の離職率は全体ではそれほど高いわけではありませんが、保育士は新卒1年目の離職率が高いという意見を聞くこともあります。
調べた所、保育者養成校の卒業生を対象にした新卒1年目の保育士の離職率調査のデータがありました。
全国保育士養成協議会(2009)の大規模調査では、保育士養成校を卒業して保育職に就職した者のうち4分の1が2年足らずで一度退職を経験していることが示されており、卒後2年の間に退職するものは20%前後というのが共通した実態といえる。
横山ら(2016)は、卒後何年目で退職したかも含めてデータ収集を行っている。それによると、卒後1年目の離職率は15.4%であり、他の年度よりも高くなっている(2年目11.1%、3年目9.2%、4年目8.3%)。このことから、横山ら(2016)は、卒後1年目の離職が全体に占める割合としては大きいと指摘している。
調査によると保育士1年目の離職率は15.4%、2年目11.1%、3年目9.2%と推移しています。
たしかに保育士1年目の離職率は高めですが、この傾向は他の職業にも当てはまるので保育士だけが特別とは言えません。詳しくは以下を参考にしてください。
離職率が低いのに保育園に保育士が足りない理由
- 保育施設の数が増えているため
- 待機児童数が減っていないため
- 保育ニーズが多様化しているため
保育施設の数が増えているため
1つ目の理由は、保育施設の数が増えているからです。
と言っても実際は保育園は減って、地域型保育事業や認定こども園が増えています。厚生労働省の資料で平成22年と平成29年を比べると、保育施設自体の数は40%も増えています。
つまり保育施設が増えて保育士の雇用枠が増えたため、そこで働く保育士が不足しているということですね。
待機児童数が減っていないため
これだけ保育園を増やして毎年保育士も増えているのに「まだ保育園が足りない」「保育士が足りない」と言われる理由は、保育を受けたい待機児童数が減っていないからです。
表に出ていた待機児童は減ったんですが、隠れ待機児童(潜在待機児童)は今も増えています。
これまで次の家庭の子供は、待機児童にはカウントされていませんでした。
- 保護者が育児休業中(7229人)
- 特定の保育所を希望している(3万5985人)
- 求職活動を休止している(7177人)
- 自治体が補助する保育サービス(東京都認証保育所や保育ママなど)を利用している(1万6963人)
育休中の待機児童はカウントされるようになりましたが、その他の待機児童はまだ6万人もいます。これ以外にも、保育園に入ることを諦めている家庭の子供は待機児童に含まれません。
保育ニーズが多様化しているため
以前と比べて保育ニーズが多様化しているのも、保育士不足の原因です。個人的には保育ニーズの多様化が保育士不足の一番の原因であり、保育士が忙しい原因だと思っています。
保育ニーズの多様化とは延長保育、早朝保育、深夜保育だけじゃなく、アレルギーや障害児対応、また虐待や貧困の増加に対して専門知識を持つ保育士の必要性が高まっていることです。
これらが原因で保育士の負担が増しているため、少子化にもかかわらず保育士をもっと増やした方が良いと言われます。
保育士を増やすには待遇改善とイメージ改善が必要
保育士を増やす一番手っ取り早い方法は「保育経験がある保育士に復帰してもらうこと」「保育士資格保有者に保育士をしてもらうこと」です。
保育士資格を持つ潜在保育士は70万人以上いますが、潜在保育士が復帰するには保育士のイメージ改善と待遇改善が必要です。
- 今の保育士の待遇を知ればイメージが変わる
- 転職が当たり前になれば待遇改善は実現する
今の保育士の待遇を知ればイメージが変わる
まず保育業界に対するイメージを変える必要があります。保育士は前より待遇改善されつつあります。ところが、マスコミなどが保育士の悪いイメージを作っている部分もあります。
たとえば保育士は給料が低いと言われますが、厚生労働省の資料で平成29年度と平成30年度の保育士の平均年収を比べると上がっていることがわかりますね。
順位 | 都道府県 | 平成30年度 | 都道府県 | 平成29年度 |
---|---|---|---|---|
1位 | 東京都 | 434.1万円 | 京都府 | 401万円 |
2位 | 京都府 | 409.8万円 | 東京都 | 394万円 |
3位 | 千葉県 | 397.2万円 | 愛知県 | 372万円 |
4位 | 神奈川県 | 384.3万円 | 岡山県 | 363万円 |
5位 | 岡山県 | 384.3万円 | 滋賀県 | 359万円 |
東京だけを見ると保育士の平均年収はたった1年で7.5%ほど上がっています。あなたの給料が1年で7.5%上がることをイメージしてください。
業界内でこれだけ給料が上がったらかなり待遇改善が進んでいることになりますが、世間どころか保育士でもこの事実を知らない人はたくさんいます。
転職が当たり前になれば待遇改善は実現する
今は保育士需要が高く、転職しやすい環境です。ところが離職率が低いということは、まだ転職に抵抗がある保育士が多いとも言えます。
保育士が良い環境を求めて転職が活発になれば、保育園は良い待遇で保育士を雇うしかありません。保育士の離職率は上がりますが、それ以上に入職率が増えるので潜在保育士も復帰しやすい環境になります。
このように全体では保育士の離職率が増えた方が良いこともある反面、1つの保育園で離職率が高い場合、その保育園に保育士が定着しない悪い原因があります。
「うちの保育園保育士が定着しない……。」という人は、以下を参考にしてあなたの保育園に離職率が高い特徴がないかチェックしてください。
離職率が高い保育園・低い保育園の特徴
ではまず保育士が定着しない、離職率が高い保育園の特徴から見ていきます。
保育士の離職率が高い保育園の特徴
保育士の離職率が高い保育園、保育士が定着しない保育園には次の特徴があります。
残業や持ち帰り仕事が多い保育園
2017年の厚生労働省の調査によると、保育士の平均残業時間は月4時間です。ただその時間は残業代が支払われた時間をカウントしただけです。
保育士の実態残業時間は持ち帰り含めて月20-30時間と言われている(もっと多い?)ので、多くの保育園で1日平均1.5時間のサービス残業があるということ。これでは保育士は定着しないですね。
給料が平均よりかなり低い保育園
給料が平均より大きく下回っている保育園は、離職率が高いです。令和2年度(2020年度)の賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均月給は24.98万円、ボーナスを含んだ平均年収は374.5万円です。
これは全体なので地域格差、年齢格差、施設形態などいろんな角度で比較してください。
年齢 | 勤続年数 | 実労働 | 超過実労働 | 月次給与額 | 年間賞与等 |
---|---|---|---|---|---|
37.6歳 | 7.7年 | 168時間 | 2時間 | 24.98万円 | 74.74万円 |
たとえば平成30年度の都道府県別平均年収を見ると、年収が高いのは東京都434万円、京都府409万円、千葉県397万円、年収が低いのは山形県312万円、宮城県315万円、茨城県315万円となっています。
また年齢別の平均年収を見ると、年齢が上がるほど平均年収が高くなる一方、年収の上昇率は若い保育士の方が高いことがわかります。
年齢 | 平成30年 | 平成26年 | 上昇率 |
20-24歳 | 291.1万円 | 257.3万円 | 113.14% |
25-29歳 | 334.5万円 | 293.9万円 | 113.81% |
30-34歳 | 348.3万円 | 306.2万円 | 113.75% |
35-39歳 | 360.7万円 | 326.9万円 | 110.34% |
40-44歳 | 377.8万円 | 351.8万円 | 107.39% |
45-49歳 | 381.8万円 | 347.5万円 | 109.87% |
50-54歳 | 394.6万円 | 365.3万円 | 108.02% |
55-59歳 | 395.7万円 | 409.8万円 | 96.56% |
60-64歳 | 356.5万円 | 420.5万円 | 84.78% |
65-69歳 | 365.0万円 | 434.2万円 | 84.06% |
70歳- | 502.8万円 | 635.1万円 | 79.17% |
産休・有給など休みが取りづらい保育園
どの保育園にも忙しい時期があります。忙しい時期は保育士同士の助け合いが必要なので、休みが取りづらくなることもあるでしょう。
ところが、忙しさ関係なく休みを取りづらい保育園もあります。とくに産休・育休や子供の病気や子供の行事で有給を取りたいときに、休みを取りづらい保育園は働く価値がありません。
女性の職場だからこそ女性特有の妊娠・出産・育児で休みを取りにくいと、保育園の離職率は格段に上がると思います。
保育士などの人間関係が悪い保育園
保育園内で人間関係が悪いパターンはいくつかあります。どれもつらいですが、自分が標的にされて先輩や園長からパワハラを受けたり、同僚からいじめの対象になるときついですよね。
人間関係にはこれといった解決方法がなく、対応するだけ時間の無駄です。自分がいじめやパワハラの標的になった場合は、今の働く環境を変えるしかないと思います。
そのため人間関係が悪い保育園は離職率が高いですが、それはある意味健全ということです。今の保育園の人間関係に悩んでいる人、転職先の人間関係が不安な人は以下も参考にしてください。
保育士の離職率が低い保育園の特徴
保育士の離職率が低い保育園には、保育士が働き続けることができる良い特徴があります。
配置基準以上に保育士が配置されている
保育士の配置基準は、保育園が守る最低限の保育士の数です。そのため配置基準がゆるい認可外保育園でも、認可保育園が守る配置基準以上に保育士を配置すれば働きやすくなります。
大切なことは単純に配置基準を守ることじゃなく、必要な保育士を適切に配置して保育しやすい環境を作ることです。
保育園に所属する保育士の数は、個人的には配置基準の1.5-2倍だと余裕を持った保育ができるかなと思います。また、フリー保育士の人数が充実していることも大切ですね。
園長が保育士の話をよく聞いてくれる
認可保育園の中でも、運営がギリギリの保育園はたくさんあります。園長や施設長は保育園を守る立場なので、ときには保育士に無理を言うこともあるかもしれません。
ただ保育士の意見を聞く園長と、そうじゃない園長は天地の差です。とくに新人保育士は園長と面と向かって話す機会が少ないので、働き方や仕事の印象など聞くきっかけがあるとありがたいですね。
園長が保育士の悩みなど話をちゃんと聞いてくれる保育園では、離職率は低くなります。
子育てをしている保育士が多い
未婚の20-30代の保育士は、自分が働き続けた先がどうなるか見えません。将来が見えないと保育園を辞めるきっかけになりますが、子育てしながら働く保育士が多いと指針になります。
出産後も保育士として働いたり、子供の発熱でシフトを代わって助け合う姿を見ると自分も安心して働ける将来を想像できます。
そのような保育園は離職率が低いだけじゃなく、出産で辞めた保育士が戻ってくることも多いですね。
20代前半(1年目-4年目)の保育士が多い
20代前半の保育士は家族やしがらみがない人が多いので、辞めたいと思ったときに辞めやすいです。先ほど話した通り保育士1年目の離職率は15.4%、2年目11.1%……というデータもあります。
そのため20代前半の若い保育士が多い保育園は、相対的に働きやすい要素や働く価値が揃っていることが考えられます。
人間関係が良く保育士の助け合いが多い
保育園の人間関係の良さは保育士一人ひとりにかかっています。嫌味や愚痴を言わない先輩保育士、テキパキと仕事をする素直な若手保育士がいないと助け合いの姿勢が生まれません。
保育士同士の助け合いがないと非効率的な仕事になり、残業や持ち帰り仕事が増えてしまいます。その結果、離職率が高くなります。
今勤めている保育園を見て、保育士が定着しない要素がないか確認してください。離職率が高い保育園は、「保育士が定着しない=働きにくい」原因があります。
周りを見渡せば、今より働きやすい保育園はたくさんあるはずです。その保育園に魅力を感じたら、積極的に転職を検討しましょう。
保育士全体の離職率はもう少し高くても良いと思う
というわけで保育士の離職率は労働者平均より低いですが、保育業界が良くなるにはもう少し離職率が上がって業界内転職が増えた方が良いということです。
これだけ保育士不足の中で、この状況がずっと放置されることはありません。現に保育士の給料は5年間で13%も上がっています(年収換算で50万円!)。
という人は良い環境とは言えませんし、今の保育園のままでは待遇は良くなりません。どちらにしても今の保育士不足の状況は、良い待遇で転職するチャンスです。
転職でもっとも大切な情報収集は転職エージェントに任せましょう。また転職エージェントを利用すれば求人探し、転職先との連絡、条件交渉などの手間も削減できます。
選び方がわからない人は、わたしが使っていたマイナビ保育士と保育士バンクを使ってみてください。公開求人数、拠点数、評価は以下の通りです。
サイト名 | 公開求人 | 拠点数※ | 転職フェア | 担当者 | サポート | 口コミ |
---|---|---|---|---|---|---|
マイナビ保育士 | 20,060件 | 12拠点 | ○ | 4.8 | 4.7 | 4.8 |
保育士バンク | 17,677件 | 8拠点 | ◎ | 4.7 | 4.8 | 4.8 |
拠点数はサービス全体、またはグループ全体のものです。
上記は2022年3月時点のサイト内調査による数値、または予測数です。
マイナビ保育士は求人数が多く、保育園情報を網羅していることが特徴です。マイナビグループなので実績も豊富で、履歴書・面接対策、面接同行などサポートも手厚いですね。
保育士バンクは担当者に元保育士が多く相談しやすいことが特徴です。またWEB面接や転職フェアなどサポートの質が高く、非公開求人も多くて使いやすいです。
-
マイナビ保育士[公式]
全国的に求人が多く、とくに関東の転職に必須!保育園情報を網羅していてサポートも◎
» マイナビ保育士の口コミを見る -
保育士バンク[公式]
担当者は元保育士が多く相談しやすい。転職フェアなどサポートも充実。地方求人も◎
» 保育士バンクの口コミを見る
転職活動には基本的に転職エージェントを使いますが、転職サイトにも登録してください。ジョブメドレー保育士は以下の理由で登録しておくと便利です。
- 転職エージェントより求人数が多いため求人比較に便利
- 担当者からの電話連絡がないのでマイペースで活動できる
- スカウトメール機能で保育園からのスカウトが期待できる
それぞれのサービスの特徴は以下でまとめたので、転職を考えている人は参考にしてください。
保育士が定着しない保育園には理由があります。保育士不足で毎日忙しい人が多い一方、小規模保育園や事業所内保育所などで余裕を持って仕事をしている保育士もたくさんいます。
保育士が足りない今の状況は、見方を変えれば転職で待遇を変えるチャンスです。給料などの待遇が良く、離職率が低い保育園を探すなど今の状況と理想の働き方を見直してみましょう。